BERUNです。
先週で暑さのピークは過ぎ去ったのでしょうか。天気予報を見ていても、最高気温が32度を下回る日が増えてきていて、嬉しい限りです。
今年は梅雨が長かったため、暑くて耐えられないような猛暑日は少なかったように感じます。32度を下回るようになると、(人によってですが)ジャケットを着る余裕が生まれたり、洋服のことを考えることができる脳に切り替わります。
洋服屋の脳内はもうすでに秋物です。ありがたいことに、コートやツイードのご注文もいただきはじめております。
秋冬物の生地
お盆が終わり、今年のはじめに仕入れていた生地が続々と入ってきました。
コロナの影響によって、ベーシックなスーツを着る人は減っていく、そう思い、以前「プライベートスーツの世界へ」という内容のブログを書きました。
シンプルな無彩色のスーツを着る人は減っていき、自分で着たいものを自由に着る、プライベートスーツが増えていくだろうと思い、書いた内容です。
しかし、仕入れた当初はまさかコロナがこのように世界を変えてしまうなんて予想できるはずもなく、いたってベーシックで質実剛健な英国生地をたくさん仕入れていました。正直、この時期に無彩色の生地が続々届くことに、一抹の不安は隠せませんでした。
お盆が明けると、少しずつお客様から秋冬物のスーツやコートのご相談をいただくようになってきて、早速仕入れたばかりの生地たちをお見せしているところです。
そして、わたしの予想を大いに覆してくれたのは、直近来られた方々が、シンプルなネイビー、グレー系のスーツをお探しだったのです。
今働き方は大きく変わり、出社する回数が減っている方がほとんどかと思います。その中でも、出社するときにはしっかりとしたスーツを着たい、という方からのお声がとても嬉しかったです。
シンプルなスーツ生地は、今多分に揃っています。
そして、薄い夏物の生地から一変し、秋冬物は厚みが生まれるため、光の当たり方によって変化していくのが魅力です。
届いた秋冬物の生地を見ていて、ネイビーの色の深さというものをひしひしと感じています。
前置きが長くなりましたが、今回はそんなネイビーの世界をお伝えしていきます。
Martin & sons.
英国生地は、ウール100%でありながら、しっかりと織り込んで作った生地のため、必然的に鈍い光沢ができます。
イタリア生地とは光沢の作り方が違うのです。
イタリア生地は、光沢を出そうとして作っています。それは思想の違いのため、どちらがいいという話ではありません。ですが、わたしは今までたくさんの生地メーカーで作ってきましたが、長い年月が経っても美しさを保ち続けているのは英国生地の方です。
こちらは英国ミル「Martin & sons.(マーチンソン)」の生地です。
マーチンソンといえば、夏用生地「fresco(フレスコ)」を発明した会社です。日本では夏のイメージがあるマーチンソンですが、実は秋冬物の生地も質実剛健そのもの。写真をはみ出す位の素晴らしいクオリティの生地です。
上の写真の生地は360gmsという厚みのある生地でありながら、平織という珍しい生地です。少しマニアックな話なので簡単にお話ししますが、一般的に生地は厚みが出てきたり、耐久性を出そうとすると綾織(ツイル)になります。デニムを想像していただけるとわかりやすいと思います。
300gmsを超えながら、平織で作るというのはあまり見かけないとてもユニークな生地です。
何年か前にわたしもこの生地でダブルのスリーピースを仕立てましたが、秋冬物のスーツで一番気に入っているスーツです。
その後、生地が売り切れになってしまったと報告を受けていたのですが、倉庫の奥底に眠っていたそうで、残りの分をまとめて購入しました。
こちらもマーチンソン。色はブルーグレーです。マーチンソンのフランネルは時代錯誤も甚だしい、超極厚の生地。触った方のほとんどが、「コートですか??」と言われます。笑
光沢、柔らかさ、着心地、それらとは全く無縁の世界の洋服です。まさにスーツが鎧と称されていた時代の物作りの生地ですね。
東京で実際に活躍するのは2ヶ月くらいでしょうか。そのくらい厚手の生地です。ですが、やはりフランネルは男をかき立てられます。男ならぜひ一着は持っておきたいです。
OYSTER
こちらはHarrisonsの新しいシリーズOYSTERという生地です。英国ではずっとOYSTERネームとして使われていたそうですが、この度ハリソンズのバンチとしてリニューアルされ、日本でも展開されることになりました。
7年ほど前、わたしはこの生地に取り憑かれたかのように、この生地ばかり使っていたときがありました。そのときに仕立てたお客様のスーツは、どれも現役で活躍しています。
400gmsという厚みのある生地でありながら、柔らかさと美しい光沢があります。
ヘリンボーンのスーツ生地というのもなかなか難しく、なかなか格好良い生地がありません。今までBERUNでも、ヘリンボーンのスーツはほとんど作ったことがありませんでした。
今回この生地を見て、直感でとても良い!と感じたので、仕入れることにしました。
同じシリーズでバーズアイも買い付けました。バーズアイはわたしのとても好きな柄ですが、なかなかピンとくる柄が少ないのです。柄の大きさ、生地感、色のトーン、光沢の出方。それらを見て決めていますが、これはネイビーのバーズアイの中ではとてもいい表情をしています。
ネイビーの深み
いくつかのネイビーをご紹介しましたが、どれをとっても表情が違うのがお分かりいただけたかと思います。
夏は明るい色を着たくなります。白やベージュ、スカイブルーやサーモンピンクなど。この時期でしか着られないような色を楽しむ季節です。
そして秋に入ってくると、色はぐっと重たくなります。その重い色の奥底に光る鈍い光沢が、秋冬物の生地の最大の魅力です。
少しずつ、新しい店舗へ生地や小物を移動しているとはいえ、相変わらずとんでもない量を仕入れてしまったと思っています。
今のお店も9月までです。
ぜひ、最後に遊びにいらしてください。
Atelier BERUN
東京神楽坂のビスポークテーラー
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