ヴィンテージレンガと秋のビスポーク

BERUNです。

秋が始まりましたね。

今年の麻はそろそろ着納めでしょうか。リネンシャツの上に春秋用のジャケットを着ることで、秋にしか楽しめないコーディネートを満喫することができます。短い秋を存分に楽しみましょう。

先週、我が家にレンガが届きました。
イギリスのヴィンテージのレンガであり、家の裏庭に敷く計画で購入したものです。
ヴィンテージのレンガ(笑)。と呆れられる方もいらっしゃるかと思います。笑

別に何でも手放しに古いものが好きだというわけではないのですが、良いものを探求していくと、必然的に全てのジャンルで古いものに行き着くのです。

まず、今作られている現行のレンガとは、土の質が全く違うそうです。昔のレンガはとても良質な土を使っていたため、とても丈夫で、密度がとてもしっかりしている。一つ一つがとても重いのです。

そして、レンガを製造する時間も、今とは異なりとてもゆっくり作られていたそうです。
現行のものは、一気に高音で焼き上げ、急速に冷やすため、簡素な焼き上がりになってしまう。表面に凹凸が多く、柔らかなレンガになってしまうため、一度使ったものを取ろうとすると壊れてしまう。
対してヴィンテージのものは、じっくりと焼き上げており、冷ます工程もじっくりとやることで、とてもしっかりとしたレンガになるそうです。そうすることで、古い洋館の取り壊しの時にレンガを取り外しても、壊れることなく一つ一つ取り出すことができるそうです。

現行のものとヴィンテージ、使った直後はもしかしたら同じように見えるかもしれませんが、10年20年と使い続けると、経年変化、味の出方が全く変わっていくとのこと。
これは洋服にも言えることですね。仕上がったときは意外とどんな洋服でも良く見えるものですが、そこからヘタリになっていくのか、味になっていくのかが本物とそうでないものの明確な違いです。

土も違えば、砂も違うそうです。一体何の事やらですが、昔は手付かずの自然の土で採掘していたが、今は土壌が開発され尽くしてしまい、昔ながらのいい土を使うことがほとんどできないという。

運んできてくれた業者のおじちゃんが、そんな話を延々と聞かせてくれました。こんなものは今はまだ手に入るけど、あと20,30年すればもうなくなるか、とてつもなく高価になっているだろう、と。

ものづくりの現場では、資本主義の残酷な問題が如実に表出してきています。今のものづくりが果たして未来のヴィンテージになりうるのだろうか。答えは「ほぼほぼ否」、です。
これはレンガに限らず、洋服でもそうですし、あらゆるジャンルの方も同じようなことを危惧しています。

本物を知らない人たちがものづくりをしていく時代が、もうすぐそこまでやってきています。
止めることができない流れではありますが、極々微力ながらその流れをせき止めることができるよう、私も次の世代に引き継いでいけるものを見つけ、そのマインドを伝えていきたいと思っています。

そんなことで、最近は涼しくなってきたので、絶賛庭仕事をやっています。
職人さんの力を借りながら、施主参加型で寅壱を履いて力仕事の日々でした。

工業高校は機械科を出た私でしたが、これは完全に土木科のスキルです。笑

時間を見つけてちょこちょこ自分でやっていきますので、完成はまだしばらく先です。

こういうのは下手でもいいんです。自分でやることが楽しいんです。

秋の洋服が仕上がってきました

さて、藤野にいるときは土にまみれている私ですが、やはり都会の洗練された空気も吸いたくなります。
8月初旬にオーダーをいただいていた方々の洋服が徐々に仕上がってきました。
まだ8月初旬の頃は、完成してもまだ着るのは先かな?なんて思っていましたが、今年は寒くなるのが早かったですね。早速着て帰られる方もいらっしゃり、嬉しい限りです。

今はなきEdwin Woodhouseの名作生地、「Vintage Twist」を使用してお仕立てした3ピーススーツが仕上がってきました。
ビフォーの写真を撮り忘れてしまいましたが、本当に見違える変貌ぶりでした。
少し話は脱線しますが、受け取りの際、ドアを開けた瞬間、A様のネクタイの結び目が見たことがない形をしていました。
どうやら、Youtubeで色々なネクタイの結び方をご覧になられて、やってみたかったとのことでした。

数十種類あると言われているネクタイの結び方ですが、これはよくある話で、一部の業界の人が、何かネタを増やした方が面白いと思ってもらえるのではないか?と思い立ち、あれこれと思いつく限りのネタを試行錯誤して考えるわけです。

まぁ、あまりクリエイティブな発想ではないと思います。着こなしにユニークさを求めている方にはいいかもしれませんが、ビスポークの世界ではあまり縁のない話です。

私は、ネクタイの結び方は2種類で十分だと思っています
一つはプレーンノット、もう一つはセミウィンザーノット

あれ?ウィンザーノットはやらないんですか??
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
私個人的な感覚といたしまして、ウィンザーノットはどうも美しいと思えないのです。
本来、真っ当な太さのネクタイを選んでいれば、セミウィンザーノットで結べば十分なボリュームになります。

これを、巷に売っている細いネクタイなんかを選んでしまうと、ノットに十分なボリュームができないので、ウィンザーノットにするか、となってしまうのです。
ですが、細いネクタイをウィンザーノットで巻いたときのノットほど不恰好なものはありません
これはぜひ頭に入れておいていただきたいです。

というわけで話は戻りまして、A様には旅館の部屋においてある浴衣の帯のような複雑な結び目になっているネクタイは外していただき、シンプルなワインレッドのソリッドタイを着けさせていただきました。


このVintage Twistという生地、一見無地なのですが、4本の糸で織られているため、霜降りがかっていて、よく見るととても複雑な表情をしています。
起毛感がありながら、300gmsという夏以外使える厚みという、とても優秀な生地です。

ウェストコートとトラウザーズの繋がりがとても綺麗です。この繋がりは、トラウザーズの股上を深くし、ウェストコートの丈を短くすることで生まれます。
身体が綺麗に見えるようなフィッティングが完成すれば、スーツを着ている甲斐があるというものです。

このお尻のゆとりが既製品では出せません。大抵は、お尻の下のラインに横線が入ってしまいます。その横線は生地が足りていないため、横に生地が引っ張られていることの表れです。
しかし既製品では、1着ずつその人のサイズに合わせて作ることができないため、線で合わせるのではなく、点で合わせます。
点で合わせるということは、1点でもゆとりを持って作ってしまうと、全体のラインに違和感が生まれてしまうのです。

既製品は全体をタイトにしなくては、売れない設計になっているのです

ビスポークはその人の身体のラインに沿って作ることができるため、点を意識せず、線で全体的に理想的なゆとりを作って合わせていくことができます。

根本的な考え方、作り方が違います。

ここまで聞いていただけると、わざわざビスポークをしてまで、「タイトシルエットがいい!!」というのは、あまり利口な考え方ではないことをご理解いただけるかと思います。
タイトシルエットをお探しであれば、既製品でいくらでもあります。
とても極端なことを言ってしまえば、タイトフィッティングやビッグシルエットという極端なサイジングというのは、作り手が悩む必要がない簡単なシルエットなのです。

程よいゆとり、これが一番ムツカシイ。だから美しいのです。

A様、この度は本当にありがとうございました。

コーディネートが楽しい秋

今回の秋冬生地で私が最もお勧めしたい生地、W BillのLAMLANA。
S様にはこちらの生地でジャケットをオーダーしていただきました。

カーキのジャケットは秋冬に着たくなる1着です。
LAMLANAはラムウール・アンゴラ・カシミアという3つの素材で作られています。
この素材だけを聞くと、さぞかし高級感のあるジャケットになるだろうと思いきや、ツイーディなフランネル素材で、コシがあり、程よい粗野な印象があります。とても日常使いがしやすいのです。

S様にはジャケット、ウェストコート、トラウザーズ2本をご注文していただきました。
それぞれを別に使うこともできますし、合わせて着ることでより深みのあるコーディネートになります。

Holland & Sherryのキャバリーツイルでお仕立てしたトラウザーズとウェストコート。

ウェストコートとトラウザーズ、合わせて着てもいいですし、それぞれ別で着用してももちろん大活躍します。
ベージュのウェストコートは、ダークトーンのスーツの中に合わせることで、結婚式やパーティに華を添えてくれます。

こちらは久しぶりに登場しました、デニムトラウザーズ。今やすっかり市民権を得たように、巷で当たり前のように見かけるアイテムになりましたね。何か言いたいわけではありませんが笑、私が作り始めた2010年頃は全くといっていいほど見かけることはなかったです。
タック入りも増えてきてはいますが、こちらは強気にデニムでインタック。格好いいです。

このデニムトラウザーズを履いてしまうと、もう5ポケットのカジュアルなデニムが履けなくなってしまうかもしれません。なぜなら、既製品のデニムは細いのがほとんどですから、実際履き心地は決して良くないものが多いです。

スキニーやテーパードが強いものですと、座るのが辛かったり、腰回りがかなり窮屈で苦しい、ということがあります。
それが自分のラインにピッタリ合ったデニムのトラウザーズを知ってしまうと、履き心地が良すぎて、「もうタイトなジーンズにねじ込めない、、」とBoAもびっくりの理想的なシルエットを知ってしまうわけです。

この組み合わせも素敵ですね。
オンオフどちらも活用できるデニムトラウザーズは、一本あるととても便利です。

秋は洋服を存分に楽しむことができる楽しい季節です。

-Atelier BERUN-
東京神楽坂のビスポークテーラー

東京都神楽坂6-73-15
メゾンドガーデニア301

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