秋から冬へ

BERUNです。

長い秋が終わり、数日前から冬の風に変わりました。
薄手のコットンのスプリングコートはそろそろ着納めです。

ありがたいことに、8、9月に秋冬物をオーダーされる方が増えてきて、嬉しい限りです。
10月に秋冬物が完成した方は、寒くなるのが今か今かと待ち望んでいたと思います。

冬の風になって、わたし自身の感覚も変わってきたのか、今年はモールスキンやコーデュロイよりも、フランネルが気分です。

我慢できず、生地棚にある生地を引っ張り出し、ハサミを入れてしまいました。
ヴィンテージのホーランド&シェリーのウールカシミア。ベージュカラーで、しっかりと厚みがありながらも、カシミア混の独特のぬめりがあり、いつまでも触っていたくなる生地です。ベージュのフランネルトラウザーズを新調したかったため、こちらの生地を拝借しました。

ツイードジャケットにはモールスキン、またはコーデュロイ、というのが英国のスポーツコーディネートですが、今年はフランネルが履きたい気持ちが強いです。

昨年に続き、長らく暖めていた生地たちが、11月は結構お嫁に行きました。

こちらはわたしがイギリスに行ったときに直接買い付けてきたヴィンテージのW Bill社のカシミア生地。
この伝票が生地にくっ付いていたわけですが、昔はすべて手書きでアナログ管理だったのです。
(管理できていないのでは?と思いますね笑)
こういうタグが付いてくるのも、本国から直接買い付けたからこそですね。歴史を感じます。

1988/12/22から、この生地は始まったそうです。
33年前の生地。厚みはコートにできるくらいの贅沢な厚みのカシミアですが、残りが2.1mだったため、この厚みでこの色でカシミアのジャケットをつくるという、シンデレラ待ちの生地だったわけです。
2016年の1月に英国に行った際に買い付けてきたものですので、そろそろ6年前になりますね。
(そのときの記事はこちら

神様が許してくれるのなら、一日でいいからこの生地をベッドに敷いて寝たいです。布団カバーもこの生地です。

生地の王様であるカシミア、しかもヴィンテージという長年生き抜いてきた功労者ですから、一生付き合っていきたいジャケットです。

スペシャルな生地がお嫁に行くのは大変喜ばしいことですが、もう出会えない悲しみもあり、花嫁の父のような気持ちになります。(体験したことはありません笑)

Edwin woodhouseのVintage Twist(グレー無地)も無くなりました。この生地も優秀でした。

フランネル、カシミア、ツイード、やはり毎年言っていますが、冬の生地はバラエティに富んでいて素晴らしいものばかりですね。
ツイードジャケットにカシミアのベストを合わせるなんていう荒技もできてしまう楽しさがあります。

今ご注文いただいている分は、神楽坂で受けて、お渡しは新拠点の元赤坂です。
それもまた楽しいですね。

Tweed Herringbone 3piece

こちらの生地も、長らく眠っていた生地でした。
ヴィンテージのW Bill社の、グレーヘリンボーンのツイード生地。重さは500gmsオーバーです。
シンプルなグレーヘリンボーンのツイードで、3ピースをお仕立ていたしました。

生地の張りがすごいです。直線に戻ろうとする力を感じます。
なぜこのような素晴らしくシンプルで魅力的な生地が残っていたのかといいますと、ちょうど残りが、小柄な方のスリーピース分だったのです。
小柄な体格の方で、この質実剛健な生地でGO!と言う方はあまりいらっしゃらないので、こちらの生地もシンデレラ待ちというわけだったのです。
今回、クラシックなスタイルでしたので、わたしなりにO様の雰囲気を見ながら、エッセンスを入れていきました。

コテコテのクラシックスタイルにすると、コスプレのようになってしまうので、私はあくまでクラシックの要素を入れるくらいにしています。

いやぁ、本当に素晴らしい生地です。仕立て映えする生地とはまさにこのことをさします。

ツイードでありながら、生地の表面に光沢があります。羊の毛の質がとても良い証拠です。

ベストはフラップ付きのポケットにしました。

タックはインの2タック。

我ながらいい仕上がりになりました。

O様、この度は誠にありがとうございました。

自分に本当に似合う物の見つけ方

いざこうやってお仕立てして着ていただくと、小柄だから◯◯は似合わない、身体が大きいからこういうものは似合わない、というのは本当に関係がないのだと思います。

一般的には合わないと言われているかもしれない組み合わせでも、その方自身本当に好きで好きで、自信を持って着ているのなら、それはあらゆる方程式を余裕で覆してしまうのです。

つまりすべて自分の気の持ちようです。
これを言ってしまえば、洋服雑誌なんか必要無くなってしまうので、困ってしまうわけですが、わたしはこれが洋服選びの真理だと思います。

しかし、今は情報が増えすぎてしまい、その好きを見つけるのが難しくなっています。
だからこそ、余計な情報に耳を傾けすぎないことが大切ですね。

どの門を叩くか

夏の終わり頃から、YouTubeを復活してやり始めています。
ありがたいことに、今日で登録者3,000人を超えました。

どちらかというと塹壕の下でトレンチコートを着ながらチェスでもしていたい気質ではありますが(チェスはできません笑)、一つの流派として、より多くの方に届けたいという思いから、塹壕を出て、激戦地へと赴いたわけです。

正しい、間違えている、というのは、言ってしまえばその流派毎に違うので、そこは議論するところではありません。
スラックスはくるぶしが見えるくらいがカッコいい。座れないくらい細いスラックスが最高にクールという、クールスキニー派(勝手に命名しています)という流派もあります。

また、1920〜1940年頃の、古き良き時代の映画のスタイルに浸りながら、その時代を服装を通じて懐かしむノスタルジック派という流派もあります。
この流派というのは、そこからどんどん枝分かれしているので、もはや無数にあるのです。
たまたま出会う流派が何派であるのか、というのも運命ですが、色々な流派を訪問してみた結果、自分にとって理想的な流派を見つけたという方もいるでしょう。
寄り道も決して無駄ではありません。それはすべて経験になります。
しかし、若い頃からクラシックスタイルの良さに気付き、そこの門を叩ける方は、本当に恵まれていると私は思います。
中・高・専門と遊びにファッションで遊びに遊んだ私でしたので、20歳の時にテーラードの世界を知った時は、「コレだ!!!」とビビビと感じました。
いまだに興奮冷めやらず、自分自身の服作りは毎月アップデートし続けています。

私自身、BERUNのいちファンです。笑

物を買う喜び

先日、たまたまYoutubeで草薙さんの動画を見まして、彼がとてもいいことを言っていました。
コレはかなり感情がこもっていたので、文章で伝えるのが難しいですが。
仕事が大変だったり、人生色々なことがあるけど、本当に自分が気に入っている、とても好きな物、洋服を買ったとき、とても幸せな気持ちになる。ということ。とてもシンプルで、何を今更当たり前のことを言ってるんだ?と思われるかもしれませんが、私はとても心に響きました。
この気に入った物を贖うということは、人間の人生に欠かせないものだと思います。

今、風の時代に変わったと言われ、物を持つ時代から、シェアの時代に変わったと言われています。

しかし、自分が本当に持っていて豊かになる物を持たないということが、果たして本当に幸せなのでしょうか。
ありがたいことに、時代が変わってもBERUNには所有する喜びをお持ちの方がお越しいただくので、大変ありがたいですが、世の中がこのような大きな流れで変わっていくことを少し怖くも感じます。

時代を作るフロンティアはいいのですが、2番手以降の人たちは、何か大切なものを失ってしまっているように感じてしまいます。

自分が納得したものを持つということは、自分の人生、生き様を体現することど同義語のように思いますので、それを持たずに自分とは何者なのかを表現することができる人はごく少数だと思います。

何個か前のブログにも書きましたが、私は「人×物」で、「人100×物100=10000」に近い買い物を常にしたいと心がけています。
ヤフオクやメルカリで買うこともありますが、そこには人は介在していないので、やはり手元に来ても、10000の喜びは感じられないのです。
人生を長く付き合っていきたいと思える物は、やはり限りなく10000に近い物だと私は思います。

10000の物に囲まれた人生は、この上ない喜びに満ち溢れた人生だと思うのです。

-Atelier BERUN-
東京神楽坂のビスポークテーラー

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