勝負の時、祝いの時

BERUNです。


何か大切なイベントがあるとき、普段スーツを着用しない人も、着る機会があります。
スーツは世界共通の自分の品格を表す名刺のようなものです。

出会って1,2秒で、この人はこういう好みの人なのか、と瞬時に判断されます。

大事なポイントとしましては、スーツとファッションは別物で考えなくてはなりません。

なぜなら、ファッションブランドのスーツを着ていると、
「ファッションにうつつを抜かしておるやつか」
と烙印を押される場合もあるからです。

わたしもファッション業界にずっといる身ですので、様々な遍歴を辿っています。
いろいろなジャンルを渡り歩いている道中、
「あっこの人はここを頂上とするのか」
と、人それぞれがてっぺんだと感じる山が異なります。

まぁこれは英国クラシックスタイルが川上だとわーわー言っている1人の人間の戯言だと思ってご笑覧ください。
(言っておきますが、わたしもまだまだ発展途上人ですので、一生涯かけて高みを目指していきたいところです)

「そこよりもっと高尚で、豊かで楽しい世界があるんですヨ」
と伝えたいのですが、そこにいる人たちは割と満足しています。

この装いの世界は
「わかりやすさ=マジョリティ」
です。

極論ですが、大多数の人の目につきやすい、わかりやすい、もてはやされやすいものは、大抵マダマダだと思っていただきたいです。

本物はやはり、足を運ばなくてはいけない、自分で(正しい)情報を取りにいかなくてはいけない。大多数の人から必ずしも評価されるものとは限らない。

という違いがあります。

まずクラシックスタイルに馴染むためには、マジョリティから離れ、彼らの評価に耳を貸さない決断をする必要があります。
大衆はいつの時代も”カジュアル”、”ファッショナブル”という大波に乗っていきますので、それに流されない大きな岩になる心持ちが必要です。

その準備ができたらあとはOK。
時代がどんなに揺れ動いても動じない、磐石なクラシックスタイルのマインドが完成します。

祝いの時

親族の式典に参加されるとのことで、スーツをご注文いただきました。
大柄なK様、こういう方こそ、フィッティングの腕がなります。

選んだ生地は、体格がいい人が着ることを許される6PLYのスリーピーススーツ。

ダブルブレステッドスーツです。

強撚糸のため風通りはいいのですが、重さは驚異の510gms。
下にストンと落ちるラインがとても美しいです。

510gmsとなれば、もはや鎧です。
持つと甲冑のように重いのですが、着ると重さを感じません。これがビスポークの素晴らしさ。

黒のボウタイを合わせました。


身体が大きい方は、ブレイシーズ以外の選択肢はないとわたしは思います。

ベルトですと、どう頑張ってもずり落ちてしまいます。

お腹が落ちたところで腰のポイントを作ってしまうと、股上が低くなり、足が短く見えてしまいます。

ブレイシーズで吊り上げますと、股上をぐっと高く上げることができます。
一度使っていただけたら、そのシルエットの美しさにみなさま納得されます。

身体の大きさと合わせて、トラウザーズもしっかりとゆとりを持たせています。
こうすることで全体のバランスを合わせることになります。

今回のスーツは、はじめに着る機会は祝いの場ですが、ヘビーに着てこそ輝く生地です。
気負わず、たくさん着ていただきたいです。

K様、この度はありがとうございました!

勝負の時

「娘さんを僕にください!」

今時こんな事、言うのでしょうか?笑

緊張が収まらない、真剣勝負のとき。
自分が何者であるかを瞬時に判断されるとき。

だからこそ、浮ついた服装ではなく、クラシックなスタイルがいいのです。

元々ファッションが好きで、周りもそういう人が多い中にいると、クラシックに手を伸ばす機会がなかなかありません。
言ってしまえば、手を伸ばす必要がないのかもしれません。

なぜなら、その中だけで分かり合えるおしゃれという共通言語で評価し合えるため、わざわざ渦中から飛び出す必要がないからです。

しかし、なにかをきっかけにぽんと飛び出したとき、はじめて自分がいた世界を外から見ることができます。

今回、お兄様からの紹介で来られたN様。
ファッションブランドの服を買っていたが、1,2年で着なくなる服が多かったという話をされていました。

流行は過去を古く見せるため、もう着たくなくなるように作ります。
そうして、今季のものを買ってもらうのです。

わたしもその中にいたこともありますが、その当時は正直結構疲れていたと思います。
クローゼットには古くなった過去のトレンド服ばかりで、ワクワクしません。

今わたしのクローゼットは、ジャケットやコートで埋め尽くされています。(ご想像の通りです笑)
サイズもデザインも大きくは変わらず、10年以上作り続けているのですが、今も昔の洋服を普通に着ています。

普通の服が増えていくことで、人生の服を考える時間が限りなく短くなっていきます。

これがあればOK。というような強固な1着を少しずつ増やしていく。それがわたしは洋服との程よい付き合い方だと思います。

自分目線で決めるのではなく、今日誰と出会うのか、どこに行くのか、というシチュエーションで洋服を考えるようにすると、必要なワードローブが見えてきます。

選んだのはコットンスーツ。

ブラウンのコットン生地で、ブレイシーズも共生地でお作りしました。

コットンスーツは日本ではあまり注目されませんが、わたしはとても推したいスーツです。

程よいカジュアルさがあり、まさに休日に着る、プライベートスーツにピッタリです。

コットンスーツはカジュアルな雰囲気が出るため、ビジネスでスーツを必要としている人は着ることはできません。

普段着でスーツを選ぶ方だけが着ることができます。

そのため、オンオフという言葉がある日本ではなかなか浸透しないのも無理もないですね。

日本はスーツを着ている人も、休日になると途端にカジュアルになります。

その中間の、カジュアルにドレスを楽しむ習慣が根付いていないのです。

VANジャケットが作り出したアメリカントラッドの時代まではよかったのですが、そこから70年代に入り、アメカジファッションが日本に来てからはカジュアル一本で、どんどんファッション文化が成り下がっていっています。

これではいかんでしょう。パリッとした服を着て街を歩く人たちがもっと増えてほしいものです。

元々カジュアル畑だったわたしですので、カジュアルとフォーマルの間のものを作るのは自信があります。

カジュアルとフォーマルのフォーマルよりのテイストですね。

その塩梅の品物は日本にあまり多くないので、いつも頭を悩ませます。

ネクタイはわたしがイギリス、イタリアに行っていたときに買い付けをしてきたもの。残りの数がかなり少ない中、BERUNのオリジナルタイよりも雰囲気が合うだろうとこちらを選びました。

ブラウンのコットンスーツに、明るめのブラウンの小紋タイ。うん。いい塩梅です。

靴はボルドーのダービーシューズ。
2アイレットのため、脱ぎ履きがしやすいです。

革靴に慣れていない方は、靴紐をほどいて履くということが面倒に感じる場合があります。

この2アイレットにしますと、チャッカーブーツのように、ほどいてぱっと脱ぎ履きできるため、ストレスはかなり軽減されます。

2アイレットのため、紐部分が短いデザインです。
このままのプレーントゥでは間延びしてしまうので、つま先にメダリオンの装飾を加えました。

カジュアルとフォーマルのいいバランスです。

ここにももうひと技。

全体がブラウンの中、今回こちらのコーディネートは靴だけボルドーにしてあるため、靴下もブラウンにしてしまうと、靴のみが孤軍奮闘することになります。

そのため、靴の援軍を増やすために、靴下もボルドーにしています。

こうすることで、劣勢だったボルドー軍がもうひと踏ん張りしてくれて、よいバランスになるのです。

参考になりましたら幸いです。

かっちりフォーマル、ビジネススーツもよいですが、このような既製服では作り出せない絶妙なスタイルのスーツは、ビスポークならではだと思います。

あとはこういうテイストの得意不得意がありますが、わたしは大得意です⭐︎

休日にさらっとジャケット、スーツを着る人が増えてほしいですね!

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-Atelier BERUN-
東京都港区元赤坂のビスポークテーラー

洋装士:竹内大途

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