BERUNです。
先週末の神楽坂はたいへん人が賑わっていました。
みなさん我慢していた思いがはじけとんだのでしょう。
BERUNは変わらず週2,3ペースですが、久しぶりの服飾談義に華を咲かせ、毎日楽しく過ごさせていただいております。
昨日までの週末は久しぶりに両日店を開け、夏のお洒落を楽しみにされていた方に来ていただきました。
年始に買い付けた生地も少しずつ、ようやく出はじめて、嬉しい限りです。
暑い夏でもお洒落をするためには工夫が必要です。
「お洒落は我慢」
それはもちろん一理ありますが、我慢は最低限にして、いかに快適に過ごすことができるかを主軸においた方がいいでしょう。
そういう意味で、わたしは季節に合わせて生地選びにかなり重きを置いています。
モヘア、リネン、シルク。全て夏に特化した美しい生地たちです。
今回はその中で、シルクとリネンについて。
シルク/リネンというコンビネーション
こちらの生地はリネン70%/シルク30%という大変贅沢な生地です。
贅沢といいましても、価格は決して高くはありません。
日本の着物の生地を織っていた機織工場が、洋服の生地を作った珍しいものです。
わたし自身、和洋折衷は好みません。(個人的に、このブランドは上手いなぁと思うのはイッセイミヤケです。あのくらいあざとくなく、日本らしさを表現できているブランドはなかなかありません。)
わたしが学生のとき、パリコレに毎年監修として出向いていた先生がいましたが、その方が口すっぱく言っていたのを今でも覚えています。
「どんなに名の通ったブランドであろうと、和洋折衷がテーマになった途端、プロからは総スカンをくらってしまう。そのくらい洋服に和を持ち込むのは繊細で難しいことなんだ」と。
今ではかなり少なくなりましたが、わたしがこの仕事を始めた2010年の頃は、スーツの裏地を和柄にするスタイルがちらほらありました。
和を重んじていれば、決してそのような軽率なデザインは選びません。
話が長くなりましたが、そんな思いの中、こちらの生地は、前述しましたように、着物の機織工場が洋服の生地を作ったもの、つまり、和が洋に歩み寄ってきてくれた生地です。そのため、洋服にしてもヘンテコなものにはなりません。
しかし、こういう生地は着る人を大変選びます。まず、若い者には似合いません。
まさにR60の生地でしょう。
ごくたまに、私が挑戦的に仕入れた、シンデレラファブリックに目を留めてくださる方がいます。
シンデレラファブリックとは造語ですが、多くの人のニーズを度外視した、この生地に合う方がくるまで寝かせておく、すぐに出ることを想定していないというとてもマニアックな素材のことです。
こちらもまさにそれに属する生地でした。ぴったりとイメージに合う方に出会えて、とても光栄です。
リネンはカジュアル素材なのか
わたしが「麻のシャツ、麻のシャツ」と言い続けていることに、もしかしたら少し疑問を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
そのような方は、一般的な麻のシャツのイメージである、“ワンマイルウェア“とよばれる、カジュアルな形のものをイメージされているからかと思います。
今回はその一般的な麻のシャツと、わたしが普段作っているものがどのように違うか、少しお話いたします。
まず一般的な麻のシャツは、素材が薄く、“襟が寝ている“ものがほとんどです。
これは襟が寝ているシャツをわたしは持ち合わせていないため、写真でお伝えすることができないのが心苦しいですが、言葉通り、襟が“立っていない”のです。
対してBERUNのシャツは、素材をリネンにしただけで、形はドレスシャツをキープしています。そして、リネンの素材も少し肉厚です。
そのため、シャツ1枚だけで、カジュアルすぎないエレガントな雰囲気になるのです。
ここまではご存じの方もいたかもしれませんが、もう一つ、BERUNのBESPOKEリネンシャツの大きな特徴を1つお伝えします。
それは、襟と袖に使う芯地を、水に溶けない硬めの芯を使っていることです。
現在、一般的にシャツに使う芯は、製作のときのエラーをなくすために使用しているため、自宅で洗うと溶けるものが使われています。
生地と生地の間に芯を貼り、製作しやすいようにして製品として仕上げます。その後、ご家庭で洗うと、その芯は溶けて柔らかくなる、というのが日本のシャツの特徴です。
ひと昔前までは違ったようですが、日本人の美的感覚が、柔らかい、しっとり、という方向に主軸を切った時代から、硬い、ゴツゴツした、というものは全般的にウケが悪くなったのだと思います。
わたしが今使っている芯も、職人方はとても懐かしみます。
「80年代はみんなこれだった!襟もこのくらい大きくてねぇ。今は細く薄く柔らかくだからねぇ。」
この一般的なシャツとの明らかな違いは、リネンシャツを洗いざらしのままノンアイロンで着られるのはなぜか、ということを先日お客様と話しているときに気がつきました。
確かに、既製品のシャツであれば、襟と袖にシワが寄ってしまい、途端に安っぽくなってしまいます。
それは芯地を変えるだけで解消されるのですが、なぜこの硬い芯がいいのか。ということを熱心に説明できる店員がいないでしょうから、既製品では今のような製品作りになってしまうのも仕方ないでしょう。
まぁ、もちろん好みもありますので、柔らかい方が断然好みだという方もいらっしゃると思います。わたしは質実剛健なさまを夏の洋服にも求めているので、必然的にこういった選択になります。
こちらはBERUNで何年も前から置いてある生地です。色はベージュ。
白、サックスブルー、オレンジ、グリーン、レッド、イエロー、etc,,,
リネンはどんな色を作っても、自然に綺麗に仕上がってしまう魔法のような素材です。
その中で、我々が意外と選ばない色が、こちらのベージュです。
数年前に巻きで仕入れたのですが、今まで3着ほどしか作っていません。
肌の色に近いベージュは、ジャケット、トラウザーズに使うことはあれど、意外とシャツに使うことは少ないのかもしれません。
ですが今回久しぶりに作ってみて、素晴らしく綺麗な仕上がりに大満足でした。
わたしも作りたい。。笑
皆様と洋服のお話をしていることは、毎回自分の誘惑と戦っていることと同義語です。笑
夏物はまだ間に合います。
猛暑でも対応できる洋服もあります。
夏はお洒落を放棄する季節ではないので、前のめりに季節を取り入れて楽しんでください。
Atelier BERUN
東京都新宿区神楽坂6-8-23
◆http://berun.jp/
◆Facebook
◆Tel : 03-3235-2225