人と洋服

BERUNです。

ここ数日、暖かい日が続いています。
土日はご予約の方がお越しいただき、春夏物のストイックな生地を愛でる時間を過ごしていました。今の時期でしかご提案できない(しづらい)英国の肉厚な夏生地を、心置きなくお見せできるのがとてもうれしいです。

 

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突然ですが、人が応援をしたくなる人とはどういう人でしょうか。
わたしなりの解釈ですが、本当にその仕事に本気で取り組んでいて、大好きな仕事だということが、毛穴からにじみ出ている人。そんな人だと思います。
そしてわたしも物を購入するときは、できる限りそういう人にお金を支払いたいと思っています。
しかし、その情熱を若いうちだけではなく、年を重ねてからも持ち続けていられる人は本当に少ない。
わたしも大好きな仕事で生計を立てさせていただいている身です。その情熱を絶やすことなく、いつまでも燃やし続けていくことが、皆さまのためになるのだと感じます。経験は積み重ね、しかし脳みそはぷるぷるに、常に柔軟に。難しい話ですが、そういう人が魅力的なのだと思います。

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BERUNはトラッド×2と口うるさく言っていますが、日々、年々、物作りの仕上がるものは変わっていっています。
変わっていくというより、根本の思想はそのままで、それが年を重ねていく毎に、表現の純度が高まっていっているという感じでしょうか。
今回書くことは、10年、20年後も同じものを着続けるというトラッドの教えからは反していると思いますが、わたしなりの意見を述べたいと思います。

まだ仕事をばりばりこなすような方が、5年後も”同じ気持ちで”着ていられるような洋服を、手にしていてはいけないのではないか、とわたしは思います。ここで気をつけていただきたいのは、決して着てはいけない!と言っているわけではありません。同じ気持ちで付き合い続けるのではなく、その洋服との関係性が年を重ねる毎に変わっていくというのが理想的なのです。

人生を本気で生きていると、洋服がその人の成長に置いていかれるということが往々にして起こります。
購入した当初はとても気に入っていたのに、なぜか最近、違和感がある。という気持ちは、ご自身が成長しているからです。
そういったとき、これからどうやって洋服選びをしていくべきか。これはわたしの考え方めすがわたしなりの考えですが、2~3年後にようやく着慣れてくるような洋服を選ぶといいと思います。
そうすることではじめの2年は、この洋服を着こなせるようになりたい!という思いが芽生えます。それが成長へと繋がり、年数を重ねたときには、雨の日でも臆することなく着られるようになっているでしょう。

それが”洋服を着こなす”ということだと思います。何も格好良く着飾るのが着こなすというわけではありません。自分が気に入った洋服を愛して着用し、それが普通に着られるようになること。
そうなるためには、今の自分では少し着負けしてしまうのでは、というくらいの洋服を選ぶといいと思います。

 

トラッドの洋服は”着てなんぼ”です。
特に英国服はその通りで、着続けていくことによって、はじめてその洋服の良さがじわじわとわかってきます。

新品のBarbour(バーブアー)はとてもじゃないが恥ずかしくて着られない。きれいにワックス掛けされたランドローバーほどかっこ悪いものはない。というのが英国人の発想です。
そのマインドをそのまま日本に持ち込むのは、どだい無理な話です。しかし、本国ではどのように解釈され、どのように使われているのかを理解することは、その物に愛着をもつためにはとても大切なことだと思います。

わたしが皆様に、「(※)神棚に上げず、最低でも週1~2回は着てください」と言っているのはそれが所以です。
(※=「いざというとき、お願いします!パンパンッ」 スーツを日常ではなく、特別なときに着る大切な服にしてしまうことを、わたしは神棚にあげると言っています笑)

そうすることによって、現代の洋服論からは明らかに逸脱した、耐久性や仕立て映えを肌で実感していただくことが日々できるのです。
洋服と付き合うとはそういうことだと思います。
取って替えての世界で生き続けるのは、決して豊かな考え方ではないでしょう。

ホンモノの着るは、偽物を着ないというわけではなく、その洋服を”正しく着る”、ということだと思います。

 


Atelier BERUN

東京都新宿区神楽坂6-8-23

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