日本人の理想型とは

BERUNです。

昨日までの週末は暖かく、本当に過ごしやすい日でした。
店前のアジサイも芽を出し始め、春の訪れを感じています。
暖かくなってきたので、英H Lesser & Sons. ×伊Carlo Barberaのサマーウールジャケットを出しました。

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先週書いた英国W Bill社の氏は、この生地のことを酷評していました笑
「こんなのはレッサーじゃない。ただのイタリア生地だ」
誇り高き英国の魂には、こういった軽やかな生地感、色味は受け付けないのでしょう。持つべきプライドだと思います。

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下はHarrisonsのコットンスラックスを履きました。
久しぶりに履くと、、おかしい。。明らかに丈が短い。直立姿勢でくるぶしが見えている。なんだ、この恥ずかしいシルエットは。まるで某伊ファッション展示会に通う親父たちのようだ。。わたしにとってはお尻を出すより恥ずかしいことです。

綿や麻のような植物系素材は、空気中の水分を吸い、自然と縮みが起きてしまいます(それを未然に防ぐために湯通しをやりますが、風合いが若干変わります。しかも湯通しをやったからと言って完全に縮みがなくなるわけではありません)。
ウールのような動物系素材と違い、コットンは表面がつるっとしているため、股下を出すとミシンの縫い目があらわになってしまいます。以上をふまえ、コットンやリネンでスラックスを作る際は、あらかじめフルレングス+0.5cm位で作っておいた方がいいかもしれません。いずれ短くなるのだから。

 


スーツ・シャツを作る際、当たり前の話ですが、ミリ単位の寸法で測って見ていきます。

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体型はもちろん、その方のキャラクターや着る力、そういった感覚的要素も含めて考えていきます。

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よく言われる、「スーツのラペルと、シャツの襟と、タイの大剣の長さは同じ幅がいい」という方程式ですが、着こなしを知るはじめの段階では、覚えておくに越したことはないでしょう。
しかしこれを鵜呑みにしすぎてしまうと、日本総人口1億通りあるそれぞれの身体の特徴を、最大限まで活かすことができないとわたしは思います。

シャツの釦位置にしてもそう。多くのシャツはある程度型が決まっており、よほど細かな部分まで目を向けない限り、大柄な人によっては首が詰まって見えたり、また小柄な人によっては、勝手に胸元を見せたがりなイタリア親父っぽく見えてしまうこともあります。

こういった細分化されたサイズ感をとことん突き詰めていけるのは、ビスポークならです。
ただ寸法を測ってジャストサイズの洋服を仕上げることは、極論そこまで技術が必要とされるわけではありません。

だからBERUNには、シャツの襟型やカフスのサンプルもなければ、カタログもありません。
それらをお見せしてしまうことで、逆にお客様の可能性を狭めてしまうことになると思うからです。

どういったものができるかわからないが、その人を信用するから、後は任せよう。
それがビスポークの真意です。

はじめに話した方程式、そしてそれをあえて破り、ぎりぎりまでその人の個性を最大限まで引き出すという行為は、何か一つでもお客様が選んでしまってはできなくなってしまいます。

「ラペルは8㎝以下でなければいけない」
「着丈はお尻の半分が見える位まで短くないといけない」
というこだわりがお客様側にもし強くあるようでしたら、作り手はそこに照準を合わせて作っていかなくてはいけなくなります。それでは、作り手の想像力を100%引き出すことは難しいでしょう。

作り手は常に、その人にとってどういったものを作るのがベストなのか、ということを真剣に考えています。その可能性を最大限まで引き出すことができれば、きっと想像を超える物が完成すると思います。

 

モノづくりの仕事は、どこまで微細な点にこだわることができるかだと思います。
例えば、一見すると何の変哲もないコップだけど、持ってみると絶妙に指の収まりがいい。とても持ちやすい。工業製品ではとてもじゃないが、このクオリティは実現不可能だと言わしめる。その”一点”に100%の情熱を燃やすことができた人が、人に感動を与えることができるのだと思います。それにはゼロが1つ2つ増えても、納得をして贖う人がいるものです。

どの業界も安価でそれなりのクオリティのモノが増えてきています。これからの時代は、中途半端なものは確実に淘汰されていくでしょう。

 


英「Turnbull & Asser(ターンブル&アッサー)」、仏「Charvet(シャルベ)」、米「Brooks Brothers(ブルックスブラザーズ)」、伊はどこでしょうか。いくつか該当するかもしれません。各々、国を代表するシャツメーカーがあります。
さて日本となると、一体何のブランドが入るでしょうか。きっと、ここと肩を並べるレベルのメーカーは未だに確立されていないと思います。それはスーツや他の衣料に関しても同じことが言えます。

今まで日本のファッションシーンは、海外の見よう見まねをしてここまできました。
自国の文化を創ることを怠り、ミックスもんじゃ焼きスタイルで今日まで来ました。

それが決してわるいわけではありませんが、このブランドのこの型は、日本人のアイデンティティであり、誰が着ても似合う!というものが無いのは日本国民としては残念です。
そうなれば、もう自分たちで作り出していくしかありません。
わたしたちはアングロサクソンでなければ、ラテン系民族でもないので、自らの似合うスタイルを創作していく必要があります。

Turnbull & Asserのような強烈なストライプ柄に、大きなワイドスプレッドカラー(セミワイド)のシャツは着こなすのは難しいでしょう。あれは大柄でエリートな英国人だけが着ることを許されたアイテムだからです。Charvetのようなエレガンスに満ちあふれたシャツも、なかなか日本人には難しい。
となると、戦後から推し進められ、日本人のアイデンティティともなったアイビースタイルか。それに合点とする人もいるでしょう。確かに、ほぼ全ての人種や体格の人たちに対応できるよう開発されたアメリカントラディショナルは、日本人でも難なく着られます。しかしそれは日本らしさではなく、あくまでアメリカらしさです。さて、日本人のトラディショナルとはどこにあるのでしょうか。
しかしこういった話をしだすと、終着点がいつもなくなり困るものです。。笑

 

 


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先週末は納品が続きました。
新たなディナージャケットのスタイルのご提案。胸元をスタッズ仕様のシャツにせず、比翼シャツにしたため、胸元が開きすぎると少々寂しく見えてしまいます。そのため、ウェストコートのVの位置は通常より少し高くしました。
スラックスはゆったりと広めのサイジング。英Smith Woolensのもう廃盤になってしまったシリーズ「Antigua」を使用しました。220∼240gmsというライトウェイトにカシミアを織り込んだ贅沢な生地です。薄手ながらも、しっかりとハリのある魅力的なスーツに仕上がります。

わたしも昨年までは、夏生地と言えども、300gms近くある強撚糸の堅い生地をこよなく愛していました。今もそれは変わっていませんが、今年に入ってからは、250gmsを下回るライトウェイトな生地も良しと変わってきています。着倒すことが目的ではなく、風合いやエレガンスを愉しむ。それがライトウェイトの生地の醍醐味です。
着るシーンを考えた上で、生地を選ぶのが理想です。毎日着たいのでしたら、強撚糸の堅い生地がいい。しかし、ハレの日や大事な会議くらいにしか着ないということでしたら、そこには丈夫さよりも、優雅さを優先した方がいいと思います。

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ダブルのウェストコート、そして裾から広がるインのツータックプリーツが美しい。
生きる池波正太郎のような漢だからこそ、ここまでストイックなディナージャケットにしました。形式的な洋服ではありますが、その人それぞれの特徴を、ルールを破りすぎずに活かす。それがいいのです。

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Turnbull & Asserのカフリンクス。BERUNの店内には、置いているだけでは伝わらない、着けてみなくては魅力がわからないものがたくさんあります。
それは、アイテム自体が口うるさいものではなく、余計なことを一切していない素朴なものばかりだからです。

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靴もロングノーズとかにはせず、このくらい大人しい顔立ちの方が、身体に入ったときにいい働きをしてくれます。
販売店はディスプレイに命をかけますが、それは一目惚れを誘うからです。一目見て魅力的に見えるものほど、注意しなくてはいけないものはないでしょう。

 

 

〜今週の定休日〜

9〜12日まで4日間、お休みをいただきます。ご不便おかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

 


Atelier BERUN

東京都新宿区神楽坂6-8-23

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◆Tel : 03-3235-2225

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  1. YT より:

    春になってきました。

    スプリングコートのおすすめはありますか?

    また雨も最近降っています。傘などにもこだわりがありますか?それともマッキントッシュのコートで傘は使いませんか?

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