BERUNです。
夜に鳴く虫が変わり、気候はまだ夏だというのに、音色で秋を感じることができるようになってきました。
先日、妻が友人の結婚式が日光であるということで、せっかくなのでついていきました。
日光は昨年も一昨年も行きました。毎年恒例になりつつあります。
”山のレストラン”という素晴らしい雰囲気の店を持たれている時期オーナー宇井さんに会いに、今年もお邪魔しました。
わたしがどうこう言うと逆に安っぽくなってしまうくらい素晴らしい店です。美しく、静かで、それでいて自分の部屋みたいに寛げてしまう、完璧なお店。
宇井さんはバイクや車やヴィンテージファッションが大好きで、家族を巻き込んで、緑に囲まれながら男子トークは止まりませんでした。
少し紅葉が始まっていた日光。観光地化していますが、それでもまだ古きよきものが残っている街です。
ランチを済ませ、いろは坂を登り中禅寺湖へと向かいます。
いろは坂を登らなければ、愛車ポール(ローバーミニ)でも行けたのですが、老体には無理をさせまいと今回は現代車で行くことに。
中禅寺湖には、フランス、ベルギー、イギリス、イタリアの大使館別荘があり、その内イギリスとイタリアはもう別荘としては使われていないため、中を観覧することができます。
こちらが英国大使館別荘。
焼杉の外観に白の内装。とてもモダンな建築物でありながら、各部屋に置かれたアンティークの英国家具が違和感なく収まっています。
きっちりしたい日本人としては、テイストを1つ決めたら、そこから大きく外れることはあまりよしとしないセンスがあります。かく言うわたしもそうです。モダンとクラシックの対極をうまく表現している、とてもよい内装です。
そして何よりこの2階からの景色。西洋人が夏の避暑地として好んだ理由が大いにわかります。それでいて、現代までこの景色を破壊していない日光市に感謝です。ここに来るたびに、生まれてはいない1900年代初頭にタイムスリップした気持ちになります。
当時の人が見た景色と今も変わらない、世界でも稀な素晴らしい場所です。ここにいるだけであらゆるものが浄化される体験があります。
イサム・ノグチの照明はどこにでも合う。
ドアの向こうには切り取ったかのような景色が広がっている。
英国大使館別荘の中の写真にて。当時は滝つぼのすぐそばまで降りることができ、そこでティータイムを愉しんでいたそうです。
人生の”余白”がなくなってしまった現代。文明が発達して便利になっていけばいくほど、自らの首を締めていくことになっているように思えてなりません。
今ここで自らが、諦めとは違う、「もうすでに十分である」というところに立ち、自ら余白を作ろうとしない限り、どんどんスピードが速くなる時代の流れに飲み込まれていってしまいます。
翌日は「田母沢御用邸記念公園」を散策。
皇太子時代の大正天皇の静養所として運営されていた建物が現在は重要文化財となっています。
センスは西洋人には勝てないと諦めがついた前日から、改めて日本人の元々持っていた荘厳さをひしひしと感じた機会でした。日本人は決して西洋人に負けてなんかいない。
日本人の元々持っている美は、左右均等で、一見物静かでありながらとても大胆な印象を併せ持っている。そのようなイメージがあります。
どのアングルから見ても、均一で一切の無駄がない。その研究されつくした美学に、日本人が忘れてしまったものを感じずにはいられませんでした。
2階へ上がると、「畳の縁を踏まないでください」との注意書きが。綺麗な白に柄が入っている縁です。
話を聞いてみると、ここは天皇が使っていた部屋で、縦糸にシルクを使っているため、踏まないようにとのことでした。美しい光沢を出している縁です。しばらく角度を変えて眺めておりました。
もう一つ部屋の位が上がると、縦横どちらもシルクを使った縁になるそうです。
こちらが縦横どちらもシルクを使った畳の縁。光り方が縦と横でまったく違うのがお分かりかと思います。
化学繊維とは全く違う、鈍い光沢。最高品質の植物繊維の威厳を感じます。
お願いして、人差し指で少しだけ撫でさせてもらいました。こんな素材を畳の縁に使うなんて。とても贅沢です。
こちらが女官の部屋。仕える立場の女性たちは、シルクではなくリネン(麻)の縁でした。
この縁が変わるだけで部屋全体の雰囲気が変わります。スーツでいうと釦でしょうか。
業界でよく言われていることが、和洋折衷ほど難しいものはない。ということ。難しいというか、決してやってはいけないとまで言われています。
わたしの感覚としては、”洋をメインとして和を織り交ぜる”のはご法度。
例えば、スーツの裏地に和柄を入れるなど。服を知っている人であれば避けるアレンジです。
これがなぜかというのを、以前和の先生に聞いたことがあるのですが、和柄は季節や意味、織り方などの種類が複雑すぎて、とても現代の洋服に合わせられるものではない、と言っていました。表面的な”格好”だけを取り入れていては足元をすくわれてしまうからです。何事にも意味を持たないと、その物は薄っぺらくなってしまいます。
近年では、”和をメインとして洋を織り交ぜる”物は評価され始めています。
例えば、デニム素材の浴衣など。
和という形には寛容さがありますが、伝統的な和柄や色となると、伝統に重んじる必要が出てきます。
昔の建物や人たちを見ていて感じるのが、その和洋折衷がとても自然で格好いいのです。
その当時は偽物が少なく、良いものは上流階級のみで嗜んでいたため、文化が交流しても入り乱れることはなかったのでしょう。
昔の物から学ぶことは、まだたくさんありそうです。
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