スーツ風

BERUNです。

夏も終わり、日も少しずつ短くなってきました。
先月作成した、ブランドタグが付いた洋服が続々と上がってきております。タグが変わるだけで、物としてのイメージも一新するので気持ちがいいです。

<DUNHILL  KId mohair60%/Wool40%>

今はまさに、夏物の最後の納品と、秋冬物の立ち上がりの受注を同時にやっています。
こちらはわたしが起業してすぐの頃に仕入れていた、英「DUNHILL(ダンヒル)」の生地でお仕立てしたスリーピーススーツ。
ダンヒルの生地?と思われるかもしれませんが、アパレルが盛り上がっていたバブルの頃は、ラグジュアリーブランドが生地を機織り工場に織らせ、ブランドの名前を付けて販売していました。
当時はとてつもない金額だったと聞きます。しかし当時の物はネームバリューだけではなく、しっかりとクオリティが担保されているものばかりなので、今見てもとても素晴らしい生地ばかりです。
その当時の生地を見つけてはコレクションをするというのを、わたしは起業当時からずっとやっています。
長年自分の生地棚に置いてあったものがこうやって形になると、とても感慨深いです。写真では伝わらないのですが、色はブルーグレーです。素材はキッドモヘア60%/ウール40%。光沢が強いため、人を選ぶ生地ではあります。着方を間違えると、やんちゃなイメージにもなりかねません。
ジョンロブの靴と合わせて見事な仕上がりに協力してくださいました。間違いのない生地選びとセンスをいつもありがとうございます。

○○風

先日、吉祥寺にある、2ヶ月に1度しか営業していない珈琲屋に行ってきました。
オーナーが一杯ずつ手の込んだ作業で、丁寧に作った珈琲はとても美味しかったです。

南アフリカの現地の珈琲農園に直接行き、契約をしているため、珈琲一杯の金額はなんと50円。
いや、せめて300円くらいとってもいいでしょう。と思いましたが、オーナー曰く、豆の販売もしており、店頭で出す価格ではこれで十分採算が取れているから大丈夫なのだそう。

「世の中のコーヒー屋の金額は場所代ですよ」
と笑いながらいうものの、不器用なまでに人のために本物を安価で提供しようとするその姿勢に脱帽しました。

ふと感じたのですが、この味を珈琲だと言うと、世の中にあるコーヒーは果たしてコーヒーと呼んでいいのだろうか。
駅前のカフェでピッチャーに入れた業務用のアイスコーヒーを出し、400円払うあれは、果たしてコーヒーなのか。
わたしの中では、このように疑問符がつくような物事を、今後線引きをする意味を込めて、(心の中で)「〇〇風」と呼ぶことにしました。
簡単に作られたコーヒーを、コーヒー風と思うと、胸の中にあった違和感は自然となくなりました。

様々なジャンルで、良いものを知ることで、世の中の大衆にあるものが、いかに薄まって提供されているのかが見えてきます。

そう思うと、世の中にあふれるスーツスタイルは、ほとんどが「スーツ風」ではないだろうか。
アルスターコート風、ポロコート風、チェスターフィールドコート風、スリーピーススーツ風、etc…。
世の中のスーツスタイルに対しての違和感は、この「〇〇風」を付けることで、気持ちが和らぎます。

私は何も「スーツ風」を否定しているわけではありません。世の中にはどんな物事にも〇〇風というものは必要です。
大切なのは、それが〇〇風なのか、本物なのかを自分の判断で見分けられる力です。

そのためには、一つの業種やジャンルに絞って目を凝らして見るよりも、もっと広い視野で、世の中にある美しいもの、きれいなもの、心が惹かれるものを見て感じることが大切です。
そして、この〇〇風というのを、自分の身の回りから少しずつでも減らしていくことが、必要なことだと思います。
人は本物を知ることで、驕り高ぶるようになるのではなく、謙虚になれる。

<わが息子よ、君はどう生きるか>

最近読んだ本、かのチェスターフィールド伯爵が息子にあてた手紙を本にした内容です。
どうしても自宅にチェスターフィールドソファがほしくて、調べていたら、本人が本を書いているということを知り、読んでみたという流れです。笑
人は人に何を残すのか。生きることについて、とても学ぶことが多い本でした。服飾についても語っている項目があります。

「全人類のほとんどの人が、人を外見や所作で判断する。そのため、五感で人に良い印象を残すことに手を抜かない」
など、シンプルに伝えたいことを書いてくれています。

一部、共感した部分を抜粋しました。
分別のある人は、服装に個性が出ないように気を配る。-中略ー    けれど私自身の考えでは、若者は、みすぼらしいよりは、ちょっとがんばりすぎくらいがちょうどいい
⇒これはわたしが常に感じていることです。ですがこれを出した時代から、今はだいぶ服飾がカジュアル化してきています。個性を出さないように、アンダーステートメントに着こなそうとすれば、その分大人しい良い仕立ての服が美しすぎて目立つ時代になってきています。ここでいう個性とは、無駄に洒落っ気を出すことを良しとしないということ。色や細かなディテールにこだわるようでは、まだまだだということを表していると捉えます。
今20、30代前半位までの方は、まだ肩肘張って、自分を主張するくらいがちょうどいいと思います。そのときからもう鞘に収まってしまうようでは、その人の今後の展望は明るいとは言えないかもしれません。

一度その日の服装を決定し、それを身に付けたら、二度と服装のことは考えないこと。組み合わせがおかしいのではないか、色の調和がわるいのではないか、などと考えていたら、動作が硬くなってしまう
⇒これも正論です。髪のセットが気になって仕方がない男に立派な人がいるとは思えないですし、それは服装に関しても言えます。家を出るまではしっかりと拘るが、これと決めたら、もうそのことを考えることはやめる。そのために、下がってきて気になってしまう靴下や、ベルトをしてもウエストポイントが決まらないスラックスなど、既製服には無意識的に微細なストレスがかかっています。それをゼロに近い状態にするために、ビスポークがあります。今流行りのようなタイトすぎるスーツではなく、ストレスのない良い仕立てのスーツを着る。靴下はロングホーズで、トラウザーズは理想はブレイシーズ(サスペンダー)がいいですね。こうすることで、スーツを着て外にいるときの無意識的にかかるストレスが軽減され、仕事や人生のことに真っ直ぐ集中することができます。

とまぁ、ここまで書きましたが、わたしがとやかく言ってもしまいがないので、ぜひ一読されることをお勧めします。

Bespoke Hand made Wallet

今年の春にオーダーしていた、Keiichiroの財布が完成したと連絡を受けました。
実はわたしはまだ現物を受け取っておらず、来週受け取ります。

福島さんがフランスに革を買い付けに行く前から、パープルとバーガンディとダークブラウンの中間色、パープルメインの色の革があったら買ってきてほしい!と伝えていました。
彼が帰国して実物を見ると、まさに理想通りの色合いです。こういう美しい色は、写真では100%魅力を映し出すことは難しいのですが、それでも十分に雰囲気が伝わると思います。
オーダーをした際に伝えたことは、「カード入れは極限まで少なくしたい。4枚で。小さなポケットとかもなしで、究極にシンプルな財布が欲しい」でした。
実際、今わたしの財布にはカードが10枚以上入っています。笑 かなり冒険です。
だからこそ、自分を奮い立たせて、そぎ落として、毎日をどう生きるかを選択するかのように、使うカードを選んで仕舞う時間を作りたいと思ったのです。
感覚を研ぎ澄ませていくことで、本当に必要なものとそうでないものを直感で感じられるようになっていきたいと思い、そのトレーニングを財布に委ねました。

ビスポークとは、自分らしさを表現することであり、自分とは何か?を追求していくことだと思います。
自分がどういう人生を生きたいのか、その答えはビスポークをすることによって体現してくれます。

 

さて、秋のシーズンが始まったばかりですが、BERUNは明日4日から7日まで、恐れ入りますがお休みをいただきます。
8日以降は通常通りご予約をいただけたら店におりますので、いつでもお待ちしております。

 


Atelier BERUN

東京都新宿区神楽坂6-8-23

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◆Tel : 03-3235-2225

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