かろみ

BERUNです。

6月に入り、一部の美術館が営業を再開したので、ようやく息をできるというような気持ちでした。混沌とした時代だからこそ、美術、芸術に触れることは大切だと思います。
実際、歴史的には暗黒時代と言われている方が、歴史に名を残す芸術家が生まれているという事実も、関係のない話ではないでしょう。

イサム・ノグチ

現在、上野の東京都美術館で開催されている、イサム・ノグチの展覧会、とてもよかったです。
イサム・ノグチという名前は世代を超えているんですね。若い方がとても多かったのが印象的でした。

その展覧会の説明文に書いていた、「かろみ」という言葉がとても心に残りました。

日本人の父とアメリカ人の母をもつイサム・ノグチ氏は、日本の美はかろみ(軽み)にあると言っていたそうです。
彼の代表作である「あかり」はLight(明かり)でありますが、Light(軽い)という意味でもあります。
その軽さにこそ、日本独自の美があるというのです。

確かに納得します。和服はかろみを感じる服です。着流しという着方があるように、風に揺れる、はだける、という流動的な動きがあるのが日本の服です。

西洋の服といえば、かろみとは正反対です。質実剛健であることが何よりであり、威厳を出すために、厚く、硬さがあるのが良しとされてきました。
西洋の家具や調度品もおもみ(重み)しか感じませんね。西洋のテーブルをちゃぶ台返しすることはできないですから笑

そう考えると、木材の硬さ、重さも関係あるのだと思います。杉や檜といった国内の木は柔らかく、軽さがありますが、西洋の木といえば、オークやウォルナットのような硬く重みがある木ですから、それによって物作りや思考が変わっていくことは必然ですね。

あかりは光の彫刻とも呼ばれています。こちらの作品も、風がなびくたびに形が変わります。そこにイサム・ノグチは、日本の美を見出したのでしょう。

日々私も感じることですが、西洋の物真似だけでは面白みもないですし、日本人としての魅力を出すことはできません。わかりやすい日本らしさではない、内面的な部分を微細に洋服に持ち込むことが、日本人ができる洋服の理想的な着方だと思っております。

高松にあるイサム・ノグチ庭園美術館とは比べてはいけませんが、こちらの展覧会もとても良かったので、ご興味のある方はぜひ。

わたし自身、akariのファンで、自宅でもリビングと寝室にと、2個使っております。
こちらはイギリスのデザイナーがakariにオマージュを込めてデザインした「HOTARU」。岐阜で作っているものですが、イギリスのインテリアショップでのみ販売しているものです。2020年1月、イギリスに行った際に購入してきました。
(現在は日本でも買えるそうですね。。悔しいので、あえて調べていません笑)

ただ明るさを求めるだけの照明ではなく、部屋の中に作品を持ち込むという感覚です。

ファッションインジャパン

また、先週の9日から新国立美術館で始まった、「ファッションインジャパン」という展覧会もとても良かったです。
(溜まってたんでしょうね笑 続けて行ってきました)

<新国立美術館HPより引用>

戦前から現代に至るまでのファッションの移り変わりを、年代毎に伝えてくれています。

戦前の日本の洋服文化はとても華やかでした。和洋折衷が見事に織り交ぜられていた時代。しかし、1937年の日中戦争が長引くことで、庶民の着る服にも影響が出てきました。
そこから多くの国民が、和装から動きやすい洋装へと変わり、デザインも質素なものへと変わっていく流れができました。
しかし当時の洋服を見ていますと、その戦中の最中でも、お洒落をしたいという心が垣間見える服が多かったです。貧しい時代だからこそ、洋服はこだわって、気持ちを穏やかにしたいという意思の表れに感じました。

戦争が終わると、まだ既製服が多く出回る前、人々は洋裁学校に通い、庶民の中では洋服は自分で作るのが当たり前という時代に入ります。(この流れからなんですね。今の人生の大先輩方は裁縫ができて当たり前という方が多いのは)

戦後から60年のはじめ頃まで、最も影響力のあった媒体は映画でした。
その銀幕のムービースターに憧れて、同じような洋服を作って着るという時代が続いていきました。70年代になると既製服が多く出回っていくので、その流れは鈍化していきます。

80年代からはモード、90年代からはカジュアルファッション、00年代からはストリートファッションが台頭していきます。
ざっくりと、このくらいにしておきたいと思いますが、全体を通して感じたことは、いつの時代も、時代を作り出してきた人はとてつもないハングリー精神があったということ。

戦後から、VAN、エドワーズ、山本寛斎、コムデギャルソン、ヨージヤマモト、そしてタケオキクチ、アンダーカバー、NIGO、、ETC。
上の名前の人たちを見ていても、アプローチの仕方は時代によって変わっていっていますが、皆時代の変化を敏感に捉え、一足早く飛び出していった人たちです。

私がこの展覧会を見て感じたことですが、今のファッションはビジネス、商業的な匂いを感じるものが多くを占めていますが、昔のファッションは、人の心を暖める、生きている喜びを感じてもらうためにあったのだと思います。

そう思うと、今のファッションは力がないと思われてしまっても仕方のないことかもしれません。時代が豊かになったので、人はファッションの力を借りなくても良くなったという見方もできますし、作り手側のハングリー精神が弱まってしまったということも考えられますから。

夏はフレスコとリネンで十分

関東も梅雨入りしましたね。
雨の日はセルフレームの眼鏡は肌にべたっと張りつくので、メタルフレームにしています。
季節、気候に合わせてワードローブを考えていくと飽きがきません。

こちらはこれから製作に取り掛かる生地たちです。

オールリネン100%です。

また、先週仕上がってきた洋服に目を通してみますと、
フレスコ、フレスコ、リネン、リネン、、
先週と言っていることが変わっていません。笑

なぜわたしがリネンとフレスコが好きかといいますと、着る人を選ばないからです。
Super云々というような、細い糸で作られた生地や、シルクが入った生地などは、その人が本当に似合う人であるかどうかというのが問われます。日本ではあまりそこまで出自や身分を問われることはありませんが、欧州ではその人の品格と洋服のレベルが同等のものでなくては違和感を感じられてしまいます。

フランスの名俳優、アランドロンはやはり、「太陽がいっぱい」や、「地下室のメロディ」のような不良感のある役柄の方が合います。「パリの灯は遠く」もいい映画ですね。胡散臭い商売をしている役が彼にぴったりでした。(彼もやはり家庭環境に恵まれた人ではなかった。ちなみにわたしはアランドロン好きです)

日本ではついイケメンの俳優や綺麗な女優には、なんの役をやらせてもOKという風潮がありますが、その方がどういう生まれなのか、それを踏まえた役柄選びというのはとても大切だと思います。
その内側から滲み出てくるものが外に表れてくるので、外見だけを磨いていてもイケマセンヨ、となるわけです。つまりバランスですね。

話を戻しますと、リネンは若い方でも年を重ねられた方でも、裕福な方であろうとそうでなかろうと似合う生地です。
特に日本は昔から麻とは縁がある国なので、DNAレベルで肌馴染みがいいのです。
フレスコも同様、戦う企業戦士然り、会社を持たれているような役割の方でも合います。

こちらは最近完成したアイリッシュリネンのトラウザーズ、インディゴブルーとモカブラウン。これからの季節のマスターピースですね。

フレスコ、リネンは硬さがあります。
この硬さが夏の洋服にはとても必要です。
最初にお話しした、雨の日のセルフレームのように、肌にペタッとまとわりつくものは不快でしかありません。
そのため、肌に曲線的にまとわりついてくる生地よりも、直線的でパキッと硬い生地の方が、ひんやりと感じて心地よいのです。

「着ればわかるリネンの良さ」

リネンのスリーピース

こちらは完成したリネン100%のスリーピーススーツです。
肩パッドも入れず、芯も添えず、生地の厚みだけで仕立てています。

ボウタイも共生地でお作りさせていただきました。
軽井沢でウェディングフォトを撮られるK様。緑の中で撮られるイメージを浮かべ、K様の雰囲気、奥様とのドレスのバランスを考え、この色と生地にいたしました。
靴はクラウンのバレエシューズです。全体のバランスを考え、革靴では少し重すぎると思いましたので、軽さのあるこちらの靴をお勧めさせていただきました。

こちらはアイリッシュリネンではなく、肉厚ですが少し柔らかい麻の生地です。
麻のいい質感が全面に出ていて、ぬくもりを感じます。

ビスポークの醍醐味である、トラウザーズのヒップからのラインがとても綺麗ですね。既製品を履き慣れている方は、はじめて履くとき、「太い」と感じられます。
そう思われる方はきっと、普段履かれている既製品が細すぎるのだと思います。しばらく履いていますと大抵の方は見慣れてきます。

ほとんどのスラックスが、お尻の下のラインは横にシワが入っています。それは生地が足りない証拠です。

既製品は細くするか太くするかしかできません。万人に合わせるために作られている既製品で、「ちょうどいい」というフィッティングにはそうそう出会えません。
わたしもビスポークに出会うまで、これが自分にとって100点だと思っていたものがそうではなかったという経験があります。

オーダーはただ好きな生地を選べて、サイズを自由にオーダーできる、というだけではありません。その人の世界観を全て踏襲して作ることで、唯一無二のものが出来上がります。そこまで合わせると、ボタンホールのステッチがどうのこうのや裏地云々など、余計なことを考えるのがいかにノイズなのかということを、わかっていただけると思います。

-Atelier BERUN-
東京神楽坂のビスポークテーラー

東京都神楽坂6-73-15
メゾンドガーデニア301

http://berun.jp/
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