ベージュの季節

BERUNです。

金沢の美術館に行ったとき、売店に置いてあった本を読み終わりました。

魯山人の料理王国。

読み終わったあと、良い本読んだなぁ。という気持ちになります。文化人としての余裕があるからこそ、育むことができたことについて語っています。我々が数十年前に置いてきてしまったものが、この本の中に詰まっています。

決して料理に限った話ではなく、文化、美しさについて滔々と語りかけてくるような本です。

この本の中では、なぜ良い職人が減ってきたのか。ということについて書いています。
(この本が出版されたのが1980年ですので、40年以上前の話ですが、その時代から更に拍車がかかっているのは間違いないでしょう)

答えはシンプル、「味のわかるお客さんが減ったから

それによって、良し悪しがわからない人には良いものを作ったところでどうせわからないのだからいいだろうとなり、お互いに向上する機会を失ってしまった。

これは料理に限らず、すべての業界に通じることかと思います。
ことファッション業界に至っては、お金を持つ人が文化人から一般の人も一攫千金で大金を得ることができるようになった現代、ハイブランドの作る洋服がなんともオソマツな服が多くなったと思います。

こんな服で10万???!
えっ、即完売???

そんなこともしばしば。
個人的に、今世の中が進んでいる方向には疑問しか感じません。もし時代がそっちの方に行くのであれば、わたしは時代に乗り遅れても大いに結構だと思っています。
そのくらい、今の世界の流れはおかしな方向に進んでいるなぁと感じます。

昔は、お客様が店側に知見を広げてもらうために、色々教えるという場面もありました。店側がプロだからこその視点から、お客様に教育をするということもありました。

お互いに高め合っていけるのが理想的な関係であり、過去からひと昔前まで、そのような繋がりで私たちは文化を育んできました。

しかし、世の中が消費社会になるとともに、常に新しいものが良いという風潮になりました。普遍的なものに目を向けず、表面的なものばかりに気を取られる日々をわたしたちは過ごしてきました。

それによって失ったものは計り知れないでしょう。

これだけ多様化した現代ですが、時代が変わっても絶対的な美というものは変わりません。
その絶対的な美を掴んでさえいれば、世の中の流れの方向を理解することができます。
目の前の利益を追求するあまり、ブランド(人も然り)イメージが崩れてしまうこともあるでしょう。
一度崩れてしまったものはなかなか戻せませんから、時間をかけてゆっくりと、着実に積み上げていくことが間違いないとわたしは思います。

ベージュの季節

春から夏を感じる今の季節、春夏秋の3シーズンに向けた洋服が完成してきております。

これからの季節に活躍する色と言えば、ずばりベージュです。

春夏秋と季節を広く着用することができるため、アースカラーはとてもおすすめです。

Holland & sherry社の80年代のヴィンテージの生地を使用してお作りしたジャケット&ベスト。

ベストは背中も表地にしているため、他の洋服と合わせてオッドベストとしても使うことができます。

生地の表面がさらっとしており、美しい光沢感を出しています。それでいてしっかりとハリ感があるという、高級感と質実剛健さのどちらも兼ね備えているズルい生地です。

生地にすでに雰囲気があるため、ボタンは貝ボタンきはせず、シックな水牛ボタンにいたしました。

こういったヴィンテージの無地の生地はなかなか手に入りづらくなってきております。生地はすべて出会いです。

すでに秋冬物をというお話もいただいております。

2,3年前まででしたら、8月に一気に入れるというスタンスでやっておりましたが、わたしにとって生地探しはトレジャーハントですので、常に良いものが見つかり次第入れるようにいたしました。

そのため、実は今すでに秋冬物のお宝のような生地が眠っていたりします。

季節以外のものは別の部屋に置いてありますので、つついたら出てきます。笑

Fox check Jacket

Tさまがもう1着作っていただいたこちらは、fox brotersのもの。

ベージュベースに、ブラウン、グレーブラウン、ブルー、そして密かに緑や赤が入っています。

しかしそれだけ色を入れても奇抜にならないのは、やはり質の良さと生地メーカーの配色センスですね。

先程のベストを早速オッドベストとして合わせております。

ベージュのベストは上のジャケットの色を選ばずに着ることができますので、1着あると便利です。

リネンスーツの季節

わたしは個人的に、今年からリネンのスーツを激おすすめしていきたいと思っています。笑

すでに年間通してカジュアル化が定着し、5月からは何を着ても許されるようになった現代。

だからこそ、振り切って楽しもうではないでしょうか!というのがわたしの考え方です。

そしてその流れに賛同してくれる方は皆さんユニークな方です。

だって想像してみてください。リネンのスリーピーススーツを着て、

「俺の人生はこんなもんだ。。」

って言ってる人、0人だと思います。笑

着ているだけで豊かな気持ちになれる洋服の夏の最上位が、リネンのスーツではないでしょうか。

「リネンのスーツは涼しいのですか?」と聞かれると、即答で、

「涼しくありません」

と答えます。笑

もはや、暑いから、涼しいからどうするという洋服ではないのです。選ばれた人(自ら切符を取りに行く人)だけが着ることを許された服だと思います。

まぁ、そんなたいそうなものではなく、ただ着ているだけで、今日はいい日だなぁ、と思える。そんな洋服だとわたしは思います。

BERUNではお馴染みの共生地ブレイシーズ。

生地の段階で水通しをして生地を締めているため、洋服が完成したあとも生地が動きづらくなります。

綿や麻のような植物性の生地の場合は、この水通しをするか否かで長い目で見た時の着心地が大きく変わってきます。

ネクタイはシルクリネンのレジメンタル。

もう、最高に格好いいです。

「これいっぱい着てまず自分が見慣れた方がいいですよね?」

と言い、早速着て帰られました。

コンビシューズ(スペクテイターシューズ)でバリバリに世界観を作ることもいいですが、スペルガとかのローテクスニーカーをサラッと合わせるのも粋ですね。

頭はもちろんパナマハットで決まりです。

リネンシャツとリネントラウザーズ

リネンのスーツは少しハードルが高い、という方にぜひとも取り入れていただきたいのは、リネンのシャツとリネンのトラウザーズの組み合わせ。

ガッチリした体格をお待ちのK様。シャツもトラウザーズも程よいゆとりを出してお作りいたしました。

シャツは台襟のボタンがない、イタリアンカラー。カジュアルな雰囲気が出ながらも、エレガンスを感じるシャツに仕上がります。

わたしの中でのジャストサイズは、その人の身体の流線型に沿っていること。

どこもきついところもなく、ゆるいところもない。それが理想です。

そういうものは既製服では絶対に出会えません。

そのため、既製服はタイトかオーバーサイズか、どちらかになってしまうのです。

シンプルな洋服をジャストサイズに着るというのは、実はとても難しいことです。

シャツのみで着る場合は、ブレイシーズ(サスペンダー)をするのはToo muchかもしれません。

サイド尾錠をグッと締めてベルトレスで履くのがわたしはバランスを考えたときに美しいと思います。

K様は合わせてスペクテイターシューズをオーダーしていただきました。

白とダークブラウンの組み合わせ。春夏秋の3シーズン活用できるコンビシューズは、一足は持っておくといいでしょう。

夏のお洒落、楽しむか諦めるかは、自分の気持ち次第ですね。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

-Atelier BERUN-
東京都港区元赤坂 / 洋装士

Haruto Takeuchi / 竹内大途

03-6434-0887

https://berun.jp/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です