BERUNです。
年内は昨日で営業を終了いたしました。
仕立て屋の今の時期は、海の家でいう8月。
家族との時間はとても大切ではありますが、良い洋服を作り、それによってその人と洋服との関わり方が変わり、人生が変わる。
その機会をできる限り多くの人に提供したいと思い、10月からは営業日を増やしておりました。
わたし自身、洋服(特にテーラードの世界に入ってから)によってここまで育ててもらった自負がありますので、テーラードスタイルは人を磨き、育てる力が確実にあると思っております。
ただ、現代はわかりやすいものにフォーカスされがちです。
モテやトレンド、最先端。今カッコいいとされるもの。
このような、即効性を求めるものがつい求められてしまいます。
しかし、風邪は風邪薬では治せないというのは徐々に認識が広がってきたように、即効性のあるものに本質的なものはありません。
やはりじっくり時間をかけて、人生という長い時間を共に関わっていくような付き合い方を、人や物もしていくことが、本来の我々人間の在り方なのではないかと思うのです。
というわけで、冬の洋服は長いパートナーになってくれるようなものばかりです。
ツイード、コート、コーデュロイ、モールスキン、それらすべて、10年目でやっと始まりというような生地たちです。
そのように、じっくりゆっくり育てていく愉しみを、もっと多くの人に知ってもらいたいと切に願っております。
Fox & Hackett
ハケットがFOX BROTHERSに別注をかけて作成した生地。
オレンジにモスグリーンの千鳥格子、なんともハイセンス!
こちらは数年前に、1テーラー1着ずつという限られた数しか購入することが許されなかった生地。
わたしは大柄の方のスリーピース!と銘打って、ジャケット2着分を頼むことに成功しました笑
1着はわたしがどうしても作りたかったため、もう1人一緒に作る方をお待ちしていました。←なんて奴だ笑
ツイードで、このくらい淡いお色、格好いいですが、なかなかレベルが高いです。
着る人の力が試されます。
何十年もテーラードを愉しまれているY様が、この生地に一目惚れでした。
450〜500gms程度のツイードの中では中肉のクオリティですが、目が詰まっている生地のため、とても立体的な仕上がりになります。
この淡い色合いで、肉厚なツイードという組み合わせ。生地作りのセンスの良さを感じます。
合わせてお作りしたトラウザーズは、テーラー&ロッジのキャバルリーツイル。
細身のY様はすっきりとしたシルエットがお好みでしたので、生地の硬さを活かして、ストレートに下にストンと落とすサイズ感でお作りしました。
とてもお似合いでいらっしゃいました。
ツイードスリーピース
北海道からお越しのO様。
昨年に一度お越しいただきまして、そこからはメールのやりとりでいくつかご注文をいただいておりました。
今回は2度目のご来店。
お作りしてそのまま郵送したツイードのスリーピースを見て興奮が止まりません。
1番ベーシックなツイード、グレーへリンボーン。
お身体ががっちりされているO様。
肩、バストはしっかり出して、ウエストを絞る。
このようにメリハリを出すことで、がっちりした方でもウエストラインを作り出すことができます。
とても綺麗な背中のラインです。
ツイードコートとスリーピーススーツ
初めてお越しいただきましたK様。
イタリアものばかりのワードローブの中、今回ブリティッシュをやってみたいということでお越しいただきました。
そしてコートはツイードのチェスターフィールドがご希望とのことで、そんなことを言われますとわたしも楽しくてたまりません。
今回選んだ生地は、BERUNでも初めて使うことになった、完全Made in Japanのツイード生地。
日本の羊の毛を使い、日本で織る。
日本好きの方にはたまらない生地です。
まぁそんなジャパンアズナンバーワン!
と言いたいわけではなく、この生地ホントウにクオリティがいいのです。
羊の毛は環境によって硬さや質感が左右されるものです。
例えば、有名なオーストラリアのタスマニアウールは、オーストラリアの温厚な気候に沿った柔らかな生地感です。
対してスコットランドやアイルランドは、強い風が突き抜ける環境の中で羊は育ちます。
毛は硬くなり、身体を守るために油分もたっぷり含みます。
となると、日本はどちらかというと温厚な生地になるはずです。
普通はそうなのですが、こちらは触ってみると、ガシっとした硬派な触り心地なのです。
これは生地の仕上げでかなり英国の生地感をイメージして作ったと思われる、とても好感のもてるクオリティです。
680gmsとかなり重さはあるのですが、目が詰まっているため、厚みは感じられません。
そのため、ツイードなのに綺麗に着ることができます。
休日だとタートルネックの上にこちらのコートを羽織るだけで、冬のコーディネートが完成してしまいます。
こちらはネイビースーツ。
ネイビーのバーズアイ(鳥の目と呼ばれている遠目で見ると無地に見える柄)で、シンプルながらも上品な仕上がりになりました。
体付きもテーラードの似合うスタイルで、これを機に英国スタイルにハマっていただきたいです。
バルマカーンコートとジャケットコーデ
ローデンクロスを使用して誂えたバルマカーンコート。
初めてお越しいただいたK様は、普段はゆるっとしたカジュアルファッションが多く、これを機にテーラードスタイルも取り入れていきたいというお方。
ご本人の雰囲気を考え、硬派な英国スタイルではなく、イタリアの生地を使用する柔らかなソフトジャケットスタイルをご提案いたしました。
BERUNのことを、誰にでも
「英国英国英国ぅー!!」
とイギリス服ばかり押し付けるお店だと思わないでくださいネ♡
最も大切なのは、その方の似合うものを作ること。
そして、その方の魅力を最大限に引き出すこと。
それにつきます。
頑なに押し付けるのは自信がない証拠です。
こちらも引き出しはたくさんありますので、色々なところから出しては提案していきます。
中に着用しているのはアリストンのSuper 130のチェック柄を使ったジャケット。
トラウザーズも軽めのフランネルです。
こちらは英国FOX BROTHERSなのですが、240gmsほどの軽いフランネル生地で仕立てたジャケット。
軽く柔らかいのですが、やはりイタリアものと比べますと、生地の奥深くに芯があります。
まるでアルデンテのよう。
アニオナのアルスターコート
イタリアのレディースを得意とするAGNONA(アニオナ)の生地を使ってお仕立てしたアルスターコート。
こちらの生地でレディースで仕立てたバルマカーンコートは、昨年ブログに載せております。
残り1着分となったこちらの生地で、メンズをお作りいたしました。
イタリアのアニオナというだけあり、生地が柔らかく上品です。
大柄な男性には不向きでしょう。
当たり前のことですが、生地には体格や顔つきで合う合わないがあるので、そこをしっかり見極める必要があります。
それが的確にできるのが、プロかそうでないかの違いでしょう。
自分であれこれ選んでいては、自分が想像できるものしか作ることができません。
わたしは、依頼者の想像を超えるものを提案するためにプロがいると思っております。
グレーのヘリンボーンとブラウンのダブルフェイス。
ブラウンの方を使いまして、内側はアンコン(アンコンストラクテッド🟰非構築的な)仕立てで中の生地を見せる仕様。
アンコンにして、中を見せる。洒落感がありますね。
え?どうですか?BERUNっぽくないでしょぅ~?笑
これもすべて想像をした上で、今回お作りしたT様に合うものをお作りしました。
実は、年明けにヴィンテージの激アツい生地たちがどしどし届きます。
もう春を考える季節だというのに、どんどんどんどん冬物をこさえるワタクシ。
一体何を考えているのでしょう。
だって、良いものに出会ってしまう我が人生なのです。
ぜひ、楽しみにしていてください!
書く余裕がありましたら、年内にもう一回くらいブログ、書きたいと思います。
いつもありがとうございます。
-Atelier BERUN-
東京表参道のオーダースーツ / 洋装士
Haruto Takeuchi / 竹内大途