ツイードとニット

BERUNです。

今年はオッドベストスタイルを提案していきたいと思っております。
夏はジャケットを着ない状態でも様になるオッドベスト。
冬は暖かくかつ格好いいオッドベスト。

オッドベストとは、単品のベストのことを差します。
ジャケパンの中に合わせるベスト。
または、スーツの中のベストをオッドベストに替えることで、華やかな印象に変わります。

これはあった方がいいでしょう!
ということで、おすすめしていきたいのであります。

ですが、オッドベストスタイルを自分で選ぶのはかなりレベルが高いのです。
なぜかと言いますと、スーツのスリーピーススタイルは全て同じ生地で3つ揃いですが、ジャケパンのオッドベストとなりますと、ジャケット・トラウザーズ・ベスト、全て異なる素材で合わせなくてはいけないからです。

色・素材感・デザイン。全てを考慮して当てはめなくてはいけないため、おいそれと自分でやってみようと思うと痛いめを見ることになります。
こういう高度なスタイルはやはりプロにお願いしてこそです。

ふと思うのですが(脱線します笑)、一般の方で自称とても詳しいという方が一定数どの業界にもおりますが、プロには到底及ばないというお話。
一般の方で、スーツオタクという方がいたとしましょう。その方がたとえば毎月スーツを誂えて、年10着ほど作っていると仮定します。
一般の方で言うとかなり作っていて、詳しい部類に入るかもしれません。

ですが、プロ(名ばかりプロが多いのですが、ここでは割愛します笑)は、年間100,200着の洋服を当たり前に組み立てています。
しかも、さまざまな人に合わせてイメージを膨らませているのです。
その質と量をこなしている人に、

「俺のことを一番知っているのは俺だゼ」

と言わんばかりの自己流スタイルを押し付けるのは、決して得策ではないでしょう。

信頼のできるプロを目の前にした時、やはり一番賢いお客様は任せることができる人だと思います。

その方が、お互いいい結果になるのは目に見えています。
しかし、プロ風の人と出会ったら大変です。なんでもかんでも聞かれるわけですから。
自分の仕事以外では、人は全てお客様の立場です。
良い人に出会うために自分を磨くという、一見曖昧で遠回りに見えることが、実は一番必要なのではないかと思います。

しかしこれには唯一の例外がありまして、昔の職人仕事は、パトロンがいて成り立っていた部分もあります。
そのパトロンは貴族で、生粋の良いものを知っている審美眼を持った方。
そのような方が、目をかけている職人に、もっと良いものを作って欲しいと、世界中の良いものを見せて教える。
そのようにして、より良いものを作っていくという流れもありました。
ありましたということは、それはすでに遠い昔のお話で、そのようなパトロン文化は今はもうなくなり、お金持ちの人たちの種類が変わった今、プロを育てていくお客様という存在は大変稀有な存在になってしまったわけです。

冬のオッドベストスタイル

1着目はツイードジャケット。
そして2着目は、フランネルのジャケット、と作られたU様。
ツイードにもフランネルにも、オッドベストはシンプルなものが1つあるとどちらにも合わせられるので、コーディネートの幅がぐっと広がります。

厚手のキャバルリーツイルの生地で仕立てたオッドベスト。
よくコートで使う生地ですが、オッドベストにすると暖かく、厚みがあるため良い仕上がりになります。

下はライトブラウンのモールスキン。
BERUNでは定番中の定番のカラーです。だいぶなくなってきました。

合わせたジャケットは、ヴィンテージのスキャバル社の生地。
ブラウンにヘリンボーンの、ツイードとフランネルの中間のような生地感です。
全体をブラウントーンでまとめて、少しずつ色合いを変えたコーディネート。
ワントーンコーディネートは決まると統一感が出ます。

U様がちょうど来られた日、クルーネックニットが届いた日でした。
早速、グリーンを選んでいただきました。

各色それぞれ雰囲気が異なりまして、グリーンは最もネップの柄を楽しめる色です。

クルーネックがあれば、ジャケットの中に合わせて着ることも可能です。

オッドベストあり、なし。
ニットあり(中にネクタイを入れる、入れない)、なし。
ネクタイのみ。

これだけでVゾーンは6通りの着こなしを楽しむことができます。
その日に行く場所、合う人のイメージに合わせて変えることで、自分本位の着こなしではなく、視野の広い洋服選びになります。

また、ベスト、ニットも着ずにネクタイもないというスタイルは、ここまでアイテムが増えてきたら無しということですね。
特に冬のコーディネートで、ジャケットの中にネクタイがないという格好は間が抜けて寒々しく見えてしまいます。

そして、上に合わせて作らせていただいたのが、キャバルリーツイルのチェスターフィールドコート。
色はオリーブカラー、物に仕上がるまでこのような曖昧な色はイメージをするのが難しいです。
ですが、想像をするのが難しいからこそ、仕上がってきたときの感動は大きいです。

クルーネックニット

BERUNのニット、大変ありがたいことに、タートルネックの方が売れ行きがよく、嬉しい限りです。
その陰で、クルーネックの劣勢具合を感じております。笑

クルーネックのイメージは、いい意味でおじさんくさい、アンファッショナブルだけど、洋服選びのポイントは押さえている。
そんなニットです。
ですので、タートルネックも着るけど、クルーネックもいいよね!というようにどちらも楽しんでいただきたいのです。

肩周りはラグランスリーブの一種であるサドルショルダー。

※サドルショルダースリーブとは、肩の部分が平行になり、角張った形状をしているものです。
サドル(鞍)を肩にかけたような見た目からこう呼ばれるデザインです。

そして後ろの肩のラインが特徴的です。

ラグランの終わりから首元にかけて、きゅっとカーブをかけていっています。

このようなデザインも、なかなか見かけません。ヴィンテージのニットから着想を得たものです。

一見すると普通のニットに見えますが、見る人が見ると、「おっ」となる、通好みなものづくりをしております。

わかりやすいお洒落が当たり前の今、わかる人にだけわかるというのも、粋ですね。

都会からカントリーライフへ

都内住まいであったY様。
この度地方へ移住されるとのことで、よりツイードが楽しめる場所に行くんですね!!と羨ましさを感じました。
東京は便利ですが、地方でしか感じられないものもあります。
人が作ったものよりも、自然界に残されている物の方が多い地方。

空が広い、コンクリートではなく土がある。
作り出された美ではなく、そのものの美しさがある。

ツイードは、まさにそのようなシーンで活躍するものです。

ロンドンではフランネルスーツが合うけれど、片田舎に行くとツイードにモールスキンのトラウザーズを肩肘張らずに着ている人が多いように。

今回、完全お任せでご注文をいただきました。

ツイードジャケットにモールスキン。
そしてアルスターコート。

ツイードジャケットは、もう少しシックな柄を勧められるかと思いました。
とY様。

私の中では、この柄は間違いなく似合う!と思いましたので、真っ先におすすめしました。

プロが見えている景色と、一般の方の景色は異なります。
わたしはことツイードに至っては、今似合うというものより、10年先、もっと先を見ています。
今ももちろん着ていたらかっこいいけれど、少し緊張感がある。ちょっと背伸びしてないかな?
という位のものをお勧めしています。
そうでなくては、1つのものを10年、20年と着続けるのは無理があります。
だって、人の感覚は変わり続けるものですから、飽きずに同じものを着られるというのは、言ってしまえば、その人の感性が変化していない、育っていないということも考えられるからです。

なので私といたしましては、1つのものより長く着るために、未来を見据えたご提案しているわけです。

また、これはあくまで持論ですが、ただ1つのものを長く持てば良いというわけではないとも思っております。
例えば、その時だからかっこいいと思えるものというものが、世の中にはたくさんあります。

例えば、高校生の時に誰もがかっこいいと思う”みんなが通る”ブランド。そのようなブランドの財布を高校生からずっと30になるまで使っています。
一見美談のようにも思えますが、そのようなものは、高校の卒業とともに卒業する方がいいと私は思います。
なぜなら、それがかっこいいと思う基準は高校卒業と共に卒業する方がいいからです。

歳を重ねても、時代が変わっても良いと思う物はあります。
なるべくなら、そういうものにいち早く気づき、持ち続けていきたいものです。

Y様にご提案したこちらのツイードジャケットにモールスキン。
既にとても似合っていらっしゃいました。
そしてこれからますます似合っていくことでしょう。

そして、合わせてお作りした、こちらのアルスターコート、生地は定番のハリスツイードなのですが、厚みが通常のものより1.5倍ほどあるかなり重厚感のあるものです。

もうこのコートを着たまま、車に乗ったり気にせずあれこれしてほしい。というコートです。

カントリージェントルマンを目指して、ツイードライフを楽しんでください!

-Atelier BERUN-
東京表参道のオーダースーツ / 洋装士

Haruto Takeuchi / 竹内大途

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