生地の山とコートと

BERUNです。

先日、関西まで生地の買い付けに行って参りました。
関西には知る人も知らない、ヴィンテージの秘密の巣窟があるのです。
70,80年代に、舶来品を買いあさり、その頃から時間が止まったような倉庫があります。
そこに仕立て屋という立場で足を踏みいれているのは、私を含めて3人だけだそうです。
日本を代表する生地キチの仲間入りができて大変光栄です。笑

というわけで、そこには一生かけても掘り尽くせない量があるので、その中から集中とお金(笑)が続く限り、見尽くそうと思っております。

今回のテーマは無地、夏物のモヘア混の上質な素材。そして良いものがあったら迷わず買う!と決めていきました。
結果、とんでもない量になってしまいました。笑

しかも、この後また増えてしまいました笑笑

私はなにもヴィンテージ万歳!と言いたいわけではありません。
もちろん!ヴィンテージでしか表せないオーラはあります。
しかし、現代のものも、モダンで格好いい雰囲気の生地はたくさんあります。

スタイリッシュでクリアなイメージを好まれる方は現代の生地。
少し荒削りで粗野な印象が格好いい。アナログな雰囲気。そのようなイメージがお好きな方はヴィンテージ生地がおすすめです。

私は何事も原点を知りたい人なので、やはりヴィンテージに傾いてしまうのです。
時間と手間をかけて良いものを作ろうと励んでいた時代。

今はなんでもスピード、すぐに成果、結果、と言われる時代。
そんな時代に、古き良きものに触れることで、世の中の時間軸ではなく、本来持っている自分軸に戻れるような気がしています。

その頃のモノづくりに触れることで、自分の感性も立ち返れるような気がするのです。

来週中には店に届く予定です。
すでに満員なので、生地スペースを確保しなくてはなりません。笑

↑このブログを書いていたときから、生地が届きました。

なんですかこれは?笑

とんでもない量を買ってしまいました。

文章だと語り尽くせないので、これは重い腰を上げていよいよサブチャンネル始動して、マニアックに生地の話をする流れになりそうです。笑

冬のコートが仕上がっております。

ダークブラウン チェスターフィールドコート

ダークブラウンのキャバルリーツイルの生地でお作りしたチェスターフィールドコート。


BERUNのタートルネックと合わせて着ていただきました。
コートはネイビー、グレー系でなければ、このようにカジュアルの合わせでもとても活躍します。

FOX オーバーコート

北陸地方からお越しのI様。
お渡しはご郵送でしたが、素敵なお写真をいただきました。

FOX BROTHERSのオーバーコート生地。

グレージュカラーで、杢がかったカントリーでありながら、エレガントな雰囲気の生地です。

シンプルなチェスターフィールドコートですが、比翼仕立で袖口はターンナップ。

カントリーな色合いだからこそ、この雰囲気が合います。

I様、この度はありがとうございました。

アルスターコート

BERUNでは定番になっている、ヴィンテージのカシミヤウールの生地。
モカブラウンのような色味で、とても素敵なコートに仕上がります。

細身のO様、ウエストはしっかりと絞り、襟、肩周りはゆとりをもたせる。
メリハリをつけることにより、オーダーならではのシルエットが生まれます。

こちらはダークグレーのシンプルな生地で仕立てたツイードのアルスターコート。
ツイードですが、シックな色味のため、どんなシーンでも使うことができます。

これぞヴィンテージ

初めてお越しいただいたM様。
当日はハットを被り、恰幅の良い方で、アルカポネのような雰囲気でした。

大変ありがたいことに、私の動画を観て色々と勉強をされたとのことで、その知識を活かしてスーツを作っていたようです。

ですが、言ってしまえばスーツを売っている人なのに、スーツのことを知らない人が多いそんな世の中です。
わたしの少々マニアックな話を知らない店員もいます。

「スラックスはゆったりさせたい」
「生地はイギリス生地で」
「着丈はお尻が隠れる長さで」

これはどれも正解なのですが、すべて点でのポイントなのです。

スーツは流線型です。
流れるように作られるものに美しさがあります。
ポイントを押さえるというのは、文字通り点を押さえることです。

点と点を繋いでいっても美しい流線型にはならないように、やはり必要なのは全体像をイメージできるかです。

M様が着てこられたスーツも、とても似合っておりましたが、もっとM様を活かせるフィッティングがあると思い、ご提案をさせていただきました。

そして選んだ生地は、初めての方にはなかなかお勧めすることはない”ド”ヴィンテージの生地。

ドーメルの名作中の名作、スポーテックス。
スポーテックスはライトウェイトとヘビーウェイトの2種類ありますが、こちらはヘビーウェイトのもの。

このような生地を選ぶなら、シルエットもとことん行った方がいいです。
下手にモダンさを入れるより、THE CLASSIC。
映画の中から出てきましたと言わんばかりのスタイルでいったほうがカッコいいです。

トラウザーズを履いていただいただけでわかっていただけます。

「今までのスーツじゃないですね笑」

ヘソの上までくる股上。
ブレイシーズ(サスペンダー)で吊り上げなくてはこのシルエットは作り出せません。

そしてウエストコート(ベスト)をギリギリまで短くする。

上着はダブルブレステッド。

肩とバストをしっかり出すことで、ウエストはそこまでぎゅうぎゅうにせずとも絞られて見えます。

これがシルエットの妙。

細く見せたいなら全体のシルエットを細くすればいい!というのは1次元的な発想で、出すところを出すことで、自然と細く見えるということに気が付けば、スーツの着こなしのレベルが格段に上がります。

ご自身の身体のシルエットを見てみてください。

この身体の流れに衣服がまとって美しくなる身体でしょうか?笑

もしそうではないと思ったら、ため息をつくのではなく、ダイエットをすると宣言するのではなく、今ある自分の身体を最大限に活かす洋服のシルエットを探求すればいいのです。

そしてその探求こそ、自分1人でやるのは難しいのです。

ジャングルに1人で飛び込んで、帰ってこれるでしょうか?
やはりその地に詳しいガイドがいなくてはなりません。
そしてそのガイドによって、木の種類や、鳥の名前、その森の生態系を教えてもらうことができる。

そこに自力と他力の思考の違いがあります。

なんでも自分でやるのがいいんだ。
という方もいらっしゃいます。
ですが、わたしは自分一人でできることなんて微々たるものだと思っています。

人は他人に頼る、人と生きる、他力によってここまで育んでこれたと思います。

自分が人生一生かけて知り得ることなんてちっぽけなこと。
そこに立てることができれば、清々しく人に頼ることができます。

プロにお願いするということは、その分野はあなたに任せる!という強い他力の宣言なのです。

それができる人こそ、私は本当に強い人だと思います。

わたしも洋服については一般の方より少し知ってはいますが、こと他の分野については全くの素人です。

今の時代でいえば、SNSやITなど。
わたしはからっきしわかりませんので、そういうのは信頼できる人にお願いしています。

このスーツに合うネクタイということで、BERUNのペイズリーのプリントタイを選ばせていただきました。

群馬のアンカポネになってください!

都会と田舎のスタイルの違いを愉しむ

関西の田舎に住むO様。
田舎っていいですよね。
田舎でネイビー、グレーのスーツを着ていたら、

「どこに行くんですか?仕事ですか?」

と聞かれますが、カントリーな色のツイードを着ていたら、素敵な人だなぁと思われます。

都会的なスタイルと田舎のスタイル、どちらも楽しめるというのは最高に贅沢です。
たけのこの里ときのこの山、どっちも買って両方一緒に開けるレベルの贅沢に匹敵します。

今回、都会的なフランネルスーツをお作りいたしました。
ミディアムグレーのフランネル。

340gmsという比較的軽めの生地のため、春先まで着ることができます。

今回は、田舎でも着るツイードジャケットスタイルもお作りいただきました。

John G Hardy社のガチガチカントリーなツイード柄。
一見攻めた柄に見えますが、実はこれは昔からある柄なのです。

かなり格好いいです。
初見はオッとなりますが、着れば着るほどいいじゃん!となる。とても魅力的なジャケットです。

トラウザーズはモールスキン。

インナーにはBERUNのタートルネックを合わせていただきました。

BERUNのタートルネックは、かなり首周りが狭く作られております。

そのため、初めて被ろうと思ったとき、

「えっこれ入るの?」

と思うくらいです。ですが、そのキツさがあるからこそ、首元がキュッと締まり格好良く見えます。

格好わるいタートルネックは、そこが甘いのです。

ニットですから、着ているうちにどんどん馴染んでいきます。

かなり仕上げを硬くしたのは、着続けることで馴染んでいくのを感じていただきたいからです。

都会と田舎のスタイル、どちらも突き詰めることで、人生が華やかに広がっていきます。

-Atelier BERUN-
東京表参道のオーダースーツ / 洋装士

Haruto Takeuchi / 竹内大途

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