服にライフスタイルを合わせていく

BERUNです。

一昨日、旧藤野町のカフェレストラン「shu」にて、BERUNの9周年パーティ(当時の様子はこちらです)で演奏をしてくださった浅葉さん率いるバンドが、ライブをやりました。
藤野への移住をすでにしている友人、来年同じ時期に家が完成する友人、家が近くで遊びに来てくださったお客様、藤野で知り合った皆様と共に過ごす時間はとても楽しいひと時でした。

冬の装いは誰でも愉しめる

夏には麻のシャツと麻のトラウザーズという紳士クールビズ(SCB笑)の皆様も、秋になると上着をはおり、洋服の魅力を再認識されます。
とても嬉しいのが、特にジャケットを着なくてはいけない仕事・役職ではない方も、この時期になると上着を着用してくださいます。
そしてしっかりとウールタイを着けて、秋冬の装いを愉しんでいただいています。
ボリュームが必要なかった夏服から、ボリュームを出すことが許される冬服になると、やはりネクタイはないと物足りなく感じます。

季節は真っただ中ですが、乗り遅れたようにBERUNでは新作のタイの製作に取り掛かりました。今年の夏はネクタイ離れを顕著に感じました。わたしの店のようなアンチクールビズと謳っている店でもそのような状況なので、日本全体ではなおさら拍車がかかっているでしょう。
これからは、装うことを必要としている人、または価値を感じている人しか着用しない時代になります。
今まではスーツを制服のように強制的に着させられていた人たちは、着たくない上着やタイを振りほどき、カジュアルファッションへまっしぐらです。
その先にあるもの、それは快適さと利便性のみ。自分自身が名刺になる機会を自ら失ってしまっています。

物からライフスタイルを想像する

多くの方は、ご自身の生活を想像して、その中に必要なものを”あてはめていく”ように物を選んでいるかと思います。例えば、冷蔵庫が小さくなってきたから、もう少し大きいのにしよう。ダウンがだいぶヘタってきたから、新しいダウンを買おう。など。

それを、この物が手に入ったら、どんな生活に変わるだろうか、という風に、物を主軸にイメージをしてみてほしいのです。そうすると、今までとは考え方や、その後の過ごし方のイメージが変わると思います。
人生の想像の線上にあるものを揃えていくのではなく、その線を外れて、超えていくものを手にしてみる。ドキドキとワクワクです。
そのとき、今までの脳みその消費量ではないレベルで脳がフル回転します。
これを着ていくとしたら、どんな場所が似合うだろうか、、あそこに行ってみたいな。
このカントリージャケットなら、東京ではなくどこがいいだろうか。旅行でさっと着ていけたら気持ちがいいだろうな。
夏の装いではできなかった足し算の愉しみ方が、まさに今の時期にはできます。

ラフに着倒す美 “Tweed”

< Policarpo (Italian Tweed) >

伊Policarpo社のソフトツイードで仕立てたジャケットです。ポリカルポは2000年代に一度廃業しております。現在は復活していますが、こちらは廃業前の生地です。イタリアらしい柔らかな風合いでありながら、遊び心が過ぎない、気品を感じさせる生地です。わたしの好きなメーカーなのですが、今はほとんど出回ることもなく、こちらを見つけたときはすぐに手に入れました。

ジャケットは着ない、という方にこそ、わたしはツイードジャケットをお勧めしています。思い描いている「ジャケット」のような綺麗な着方はしなくていいのです。ラフなアウターのようにどんどん着倒してほしい。最近は子育て世代の方もお客様で増えており、子供と出かけて抱っこをすることもあるから、おしゃれはできない。という方がいらっしゃいます。そういう方にこそツイードはうってつけです。泥が付いて、雨に打たれてこそ、ツイードは魅力を増します。
そのような着方ができて、形はしっかりとテーラードで作るため、見た目はとても美しいです。こんなに便利な洋服、もっと流行ってもいいのにと毎年思っています。笑
日本で流行らない理由としては、耐用年数が長すぎるからでしょう。スーツは10年~とわたしは思っていますが、ツイードは∞です。つまり、姿形がなくなるまで着ることができる洋服です。これがクローゼットに2,3着でも入ったら、もうローテーションが代わることはなかなかありません。
わたしの長いお付き合いのお客様でも、7,8年前にお仕立てしたツイードジャケットが未だにピンピンしていて、クローゼットの中で堂々と居座っているから、新しいものを作る余白がないという方もいらっしゃいます。
わたしのような個人店では嬉しい悲鳴ですが、それが大型店で起きてしまえば死活問題となってしまいます。

以前のブログで紹介しておりました、カシミア100%のツイードジャケットが完成しました。
見た目とは裏腹に触った途端に驚愕の触り心地です。
こちらはかなり特殊な生地のため、上で述べていたような着方はできません笑
細心の注意を払って、上質な着心地を愉しんでいただきたいと思います。

裏地はLBD社のインポートを使用したパープルのアセテート。
色々な意味で”裏切られる”ジャケットです。
このような表地選びと裏地の色合わせは、着る方の雰囲気次第です。

一見すると何の変哲もないグレーのヘリンボーンには、触って驚く、脱いで驚くダブルサプライズがあります。

ワクワクする物を持つ

最近、物を持たない、物に関心がないという方が増えていると聞きます。
それは間違いなく、わたしたち作り手の責任であり、人に楽しんでもらえるような、人生がワクワクするような物を作り出せていないことが原因でしょう。
ただ物を売って終わりではなく、物を手にしてからその物とどう過ごしていこうか、というところまでを一緒に考えて、お渡しすることが、最も大切なことだとわたしは思います。

ワクワクドキドキする洋服を手に入れたとき、人生の過ごし方と言っては大げさかもしれませんが、普段は行けないと思っていた場所にも気負わず行けるようになるくらいのことで十分だと思います。そういう選択と決断がちりも積もると、いつの間にか堂に入り、自然になっているはずです。

何度も言いますが、洋服は買って終わりではありません。買ってから、その服とどこに行くのか、誰と過ごすのか、が最も大切です。

 


Atelier BERUN

東京都新宿区神楽坂6-8-23

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