一枚の白いシャツ

ベルンです。

先日、いつも通っている代官山TSUTAYAで本を読んでみたら、とても興味深い本を見つけました。

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「一枚の白いシャツ  -男、45歳からの服装術-」 河毛俊作氏

なんとこの方はアパレル関係ではなくテレビ関係の方。
アパレル業界の人が書いた本ですら当たり障りのない内容の薄い本が散乱する中、他業界の人が洋服の本を出すとは、いったいどんな内容になっているのかと、おそるおそる読み進めていました。

しかしそんな不安はすぐに払拭され、第一章のはじめの項目を読んだときには、この本をぜひたくさんの人に読んでほしいと感じました。

著者は他業界であることをいいことに、断言口調で現代の日本のファッションシーンを思いっきり切ってくれています。

今の時代にTシャツとブルージーンズだけで装いを済ませることがどれだけ野暮であり、クールでないのか。

その理由を時代の流れで言いますと、ファッションと時代背景は密接に関係しており、その時代毎の役割がありました。
戦後まだ先進国が不安定であった頃、市民はファッションや音楽で社会への反骨を強くアピールしていました。
50年代以降、世界が急成長していく過程でTシャツやジーンズ、ロックなどのストリートカルチャーは時代の代弁者になり、多くの若者の鬱憤を解消してくれるものとなっていったのです。
70年代頃からは、モードファッションも市民権を手に入れ、ファッションが更に力を持っていき、今のような巨大なビジネスに至るまでの要因にもなりました。

しかし先進国が安定へと向かっていった近年では、それらが元々もっていた反社会的な力が大衆化されてしまい、本来もっていた役割を失ってしまいました。
その最も大切なメッセージ性を失ってしまったということに全く気付かず、クールだを感じている人たちが未だに増え続けているのです。

わたしが常日頃、お客様に語り続けていることが書籍になり、代弁してくれていたとは本当に嬉しい限りです。
わたしの力なんて無力ではないにしても、限りなく微力です。
こういった間違ったことをおかしい!正しいことを合っている!と声を大にして伝えてくれている人が他にもいるのかと思うと、とても嬉しい気持ちになります。

著者は現在人気のラギッドスタイル(※)とは少し系統が異なり、靴はオールデン、JMウェストン、シャツは白のボタンダウシャツ、ジョンスメドレーのニット、と言ったような少し上品なスタイル。
(※ ラギッド=無骨な、飾り気のない、しっかりしたという男臭さを表す言葉。アメリカントラッドファッションがベースになっており、無骨で男らしい大人カジュアルファッションをさします)

著者が提案しているような、ヨーロッパ的でシンプルなカジュアルスタイルをしっかりと着こなせている日本人は本当に少ないです。

日本人はアメリカの影響が大きくあるおかげか、カジュアルになると途端にカジュアルになってしまいます。カジュアルスタイルとただのラフな格好の境が分からないのでしょう。
そのため、部屋からそのまま出てきたような格好で街中を平気でうろうろできてしまうのです。

わたしがとやかく言うよりも、この本の一章一章だけでもまず読んでみていただきたい。

洋服関係の本のほとんどが、洋服のコアな部分ばかりに注目する、いわゆる「マニア本」か、ノッチドラペルとピークドラペルの違いや、ベントの種類を教えるような、程度の低い教則本のようなものかのいずれかです。

現行のファッション誌で本当にオススメできる本は限りなくゼロに近く、本という媒体自体が買い手側の購買意欲をくすぐり続ける浪費のスパイラルでしかなくなっています。
もう今となっては、オシャレになりたいからファッション雑誌を買う、という行動は野暮であり、ナンセンスな時代になってしまいました。

それにしても、一体この人は今までどれだけ洋服に投資をしてきたのだろうか。。

想像するのが怖くなるほど、すべての文章が自分の言葉で完成されており、説得力に富んでいます。

やはり人を納得させることができる人は、それだけ多くのことを経験している人なのでしょう。

この本では文中に、著者が影響を受けた映画や本も紹介しています。
それらも60~70年代のヨーロッパの映画がメインであり、今の若い世代の方はあまり触れる機会のない映画ばかりのため、昔の本当にオシャレな映画を知るにはいいきっかけの本になると思います。

決して難しぶる文章ではなく、とても簡潔で分かりやすい本です。
わたしの近くにいる人には皆さんに読んでほしい。
そう思える本でした。

いつもありがとうございます。
ベルンでした!

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