不完全さを愛する

BERUNです。

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春夏物が始まりまして、BERUNも少しずつ賑やかになってきました。
まだ涼しさが残る3,4月に夏物の相談を受けると、こちらも物怖じせずに、英国の本気の夏物生地を提案できます。
これが5,6月となってきますと、完成する頃には梅雨も明けて夏本番となるので、ご提案できる生地の選択肢は少なくなります。(ストイックな方にはそこからでも本気生地をご提案しています)

夏を本物で過ごす

今主に提案しているのは、WOOL 100%の強撚糸、300gms~という日本の夏のことを一切考えていない質実剛健な生地です。その代わり、日本の春と秋は最高に楽しむことができます。(Mohairモヘア混の生地はもう少し時期が進んでから提案していきます)
日本の夏服地では200gms前後の、ウールに化学繊維を混ぜ合わせたハイブリッド生地が、夏の一般的な主力商品となっています。
余談ですが、化学繊維を混ぜる理由は、生地を薄くすることによって耐久性が落ちるのを、丈夫な化繊を織り交ぜることによって防ぐことができるからです。あとは化繊特有のさらっとひんやりと涼しげなタッチを求めて、安価な夏物の洋服ではよく使われています。(本来化繊は吸湿性が乏しいため、実際に真夏に着ているときは嫌な不快感がこもるものですが、生地が薄いからと、その微細なところに気が付く人も少ないのが現状です)

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IMG_3655<BERUNは徹底的に天然素材にこだわります>

生地見本の魔法ですが、300gmsくらいの生地を、一枚見本で見るととても透けて見えるので、夏でもいけそう!と思うのですが、いざ仕上がると肩パッドや芯地、裏地などの副資材が入るため、想像以上にしっかりした仕上がりになります。
そのため盛夏用の極薄の生地となると、生地見本を見ただけでは、これがスーツになるの?と不安になるくらいの薄さです。それが仕上がると、これが盛夏用かと納得して着られるちょうどよい仕上がりになります。

時代に合わせていくことの末路

年々夏の暑さが過酷になり、アンチクールビズ党にとっては非常に苦しい時代になってきました。
時代に乗り、最先端の技術で年々新しい生地を生み出し続けているのは、主にイタリア生地メーカーです。
彼らが提案する、現代の気候に合わせた生地は本当に着心地がよく、ストレスがなく、まるでスーツを着ている感覚さえなくなるようなものまであります。
ただ、すべてが便利になりすぎている世の中、このまま時代に沿って我々が順応していくこと、そこに本当のクリエイティブがあるのでしょうか。立ち止まって、考えてみたいです。

天皇はなぜインテグラに乗り続けているのか。なぜ古き良きものと呼ばれるものがあるのか。
時代と共に進化していくものは必要ですが、手の中にあるもの、すべてをそれに合わせる必要はないとわたしは思います。
いくつかの分野、もしくは一つの分野でも、絶対に譲れないという世界を持っていてもいいのではないでしょうか。それは人それぞれでいいと思います。わたしは、住環境や家電のような、「衣・食・住」の住の分野は新しい技術に寛容なので、日々アップデートしています。対して「衣・食」は、旧来型のオーセンティックスタイルが好みです。
自分自身のスタイルを”一つでも”守り続けることが、その人のアイデンティティとなりますし、味と深みになっていきます。
不便さを愛おしく思えるようになる。そもそも世の中にあるものは全て不完全な人間が作った創作物です。不完全であることが普通です。
そこに完璧さを求めようとしすぎて、病的なまでになっている人もいます。
もっと肩の力を抜いて、頑張りすぎず、普通でいいと思います。

不完全さこそが完全

舶来(インポート)の生地はよく、おもて面は綺麗でも、裏面には糸飛びが目立つものがあります。
彼らはそれを不良品だと思っていません。人が作った機械で人が作るものだから、そのくらい仕方ないという思考です。そして、おもて面に支障がないなら問題ないという寛容さが、彼らのクリエイティブな作品を生んでいるとわたしは思います。

着心地がよすぎなくてもいい、作品は不完全でいい、それらを加味して自分が選んで着る。そこに本来の洋服や人生の愉しみがあるのではないでしょうか。
そんな寛容な世の中になると、もっと心に余白が生まれ、より良いものが生まれ、素晴らしい世の中になっていくと思っています。

 


Atelier BERUN

東京都新宿区神楽坂6-8-23

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