旅先で感じる装いの事

BERUNです。

先週、家族が実家に帰るのを見計らい、一人でポールに乗り出かけてきました。

一泊二日で、御殿場⇨箱根⇨沼津という行程。とても気持ちのいい2日間でした。

1日目の御殿場はアウトレットに行き、じっくりとラグジュアリーブランドからカジュアルブランドまで周りました。
普段クラシックなスタイルを提案している私ですが、アウトレットは様々なブランドが入っているので割と楽しみな場所です。そして常日頃意識しているのは、クラシックとモダンとのバランスです。

クラシックとモダンのバランス感覚

クラシックとモダンはどちらがいいのか。わたしはこれはどちらがいいというわけではなく、バランスが何より大切だと思っています。

例えば、クラシックに行き過ぎれば、時代が止まったコスプレのように見えてしまいます。言うなれば大河ドラマの世界観です。

またモダンに傾倒し過ぎれば、現実離れした一般人とは逸脱したスタイルになってしまいます。この世界の先にいるのは、カールラガーフェルドのようなスペシャルな世界観を持った人たちです。

昨今、ヴィンテージウェアでは、ハンティングスタイル、サファリルックが流行っています。古着でそういったジャンルの服は今高値で取引されているものが多いです。しかし、果たして洋服を全く知らない人が、その格好を見たらかっこいいと思うでしょうか。
「今日はジャングルから来たの?」と思われてしまうかもしれません。それでは、せっかく高いお金を出して選んだ洋服が少し悲しいかなと思うのです。

知っている人だけが分かればいい、知らない人からはどう思われてもいい。というのはまさしくオタクの世界です。それで良いというのでしたら何も悪くないのですが、洋服は唯一着ることができる趣味ですから、せっかくお金と時間をかけるなら、この人は素敵だなと思われた方がいいと私は思います。

どの世界でもバランスがなによりも大切です。

そのバランスを6:4にするのか、8:2がいいのか、というのは個人の感覚によって立ち位置があっていいと思います。ぜひご自身のベストな立ち位置を模索してみてください。

話は長くなりましたが、何かを決めるときは、好きなお店だけでなく、世の中の全体像を感じることが大切だと思っています。

アズーロエマローネに次ぐ黄金コンビとは?

アズーロエマローネというファッション用語があります。
イタリア語で、青と茶、という意味です。
イタリア人が愛する色の組み合わせで、茶と青の2色は合わせるだけでとてもお洒落な雰囲気になります。

前の神楽坂のお店も、床が青で棚が茶という、まさにアズーロエマローネでした。

この組み合わせはお洒落が好きな人の中ではすでに定番の組み合わせになりました。
色の組み合わせとは面白いもので、この2つが見事に合うと素晴らしい化学反応が起こり、調和を保った美しいコーディネートになります。
これは生地を見ていてもそうで、何色も色が入っている生地でも、自然と調和が保たれているものは、美の方程式になぞらえてあるものがほとんどです。

このようなアズーロエマローネのような色の合わせは他にあるでしょうか。

青と茶のような最高のパートナーの色として、わたしはオリーブとボルドーの2色も挙げたいです。
オリーブとボルドーはまさに秋の色。草の色と紅葉していく赤茶色が完璧にマッチします。

こちらはロロピアーナのオープンウォーク。ボルドーのスウェードで、ちょうど私のサイズがあったので購入しました。
「えっ!ロロピアーナなんか履くの!?」
と思われる方もいらっしゃると思います。
何せ堅めの靴はかなり持ち合わせているので、スニーカーでもなく、カチッとした革靴でもない、ちょうどいい塩梅の靴を実は探していました。

一度履きましたが、あまりの履き心地の良さに癖になりそうです。スニーカー的な立ち位置の靴はもうこれでいいのではと思ってしまいました。

程よく力の抜けた物作りはイギリス人はどうも苦手ですね。やはりどうしても堅くかしこまった印象になってしまうので、こういう物作りのセンスはイタリア人には敵いません。

こちらのブルゾンはイッセイミヤケのもの。独創的なブランドが作る真面目な洋服、というのが結構好きです。コムデギャルソンの何もやらかしていないワークジャケットなんかも、20歳の頃から持っていますが、今でも着ています。

イッセイの洋服を買ったのは初めてでしたが、イッセイミヤケのショーはとても発想が面白く、毎シーズン必ず見ています。あと何より、ナイロンの肌触りがとても良い。素材のクオリティの高さを感じます。ドメスティックブランド、侮るなかれ。

イッセイの代表作である全面がプリーツで作られているシリーズ、プリーツプリーズの洋服を着ている女性を見るとドキッとしてしまいます。
独創的なお洒落はやはり女性の方が似合いますね。

オリーブのブルゾンにボルドーの靴。まさに秋の最高の組み合わせです。秋はボルドーとカーキの自然色を楽しめる季節です。

これから冬がやってきます。冬は服装は暗く重たい色が多くなりますが、空気が冷えこみ、全体的に冷たいグレーのような空気感が広がります。
意外かもしれませんが、冬は明るめのグレーやホワイトが合います。グレーはわたしの中では冬の色だと思っています。
冬はグレーのグラデーションコーデを楽しみましょう。

御殿場にある「とらやカフェ」は2度目でしたが、老舗の流儀」(⇦過去ブログにて記載)を見た後に来ると、また良さがより滲んできます。

芸術のまち箱根

翌朝、箱根にある「ラリック美術館」に行ってきました。
19世紀~20世紀のフランスのガラス工芸家で、彼の作品をじっくり見ることができます。
こういうのは開店直後に行くのがいいですね。人が誰もいなかったので、何にも邪魔されずに集中してみることができました。

館内は写真撮影NGでしたので、お見せできないのが残念ですが、とても素晴らしい空間でした。ぜひ箱根に行かれた際は足を運んでみることをお勧めします。

ルネ・ラリックの創作の原点は、生まれ育った田舎で見た、自然の中で生息する生き物たちだったそうです。
自然が一番の教科書であるというのは私もとても感じます。自然には、無駄なものが何一つありません。
全てが感覚的で、必要なものが必要な分だけ存在しているというのが自然です。それを壊しているのは人間です。
なので、何かを創造しようと思った時こそ、人間界から離れるのが最も大切なことなのだと思います。

洋の美に触れた次は和の美に触れましょう。脳内が和⇨洋⇨和⇨洋と揺さぶられていました。

箱根美術館は庭園がとてもきれいです。

向こうの山も含めて景色になるという、最高に贅沢な借景です。

庭園の中には茶室があり、お茶と和菓子をいただけました。これがまたとても美味でした。

自然で作られた曲線から、直線的な建物に入るので、石も丸から四角になっているのでしょうか。日本人のこういうユニークな発想、もっと打ち出していってもいいと思います。しかし、なかなか現代の世の中では難しいものなのでしょうか。

紅葉が始まると、まさにボルドーとオリーブの世界になります。
自然がそうなるのですから、合わないはずはないですね。やはりいつも教えてくれるのは自然です。

沼津御用邸記念公園

沼津港で中の中クラスの海鮮丼を平げ、もう一つの目的地であった、沼津御用邸記念公園へと向かいました。

決して華美ではなく、日本人の最小限の究極の美を感じることができます。
質素でありながら品格を感じる佇まいです。

この建物の中に興味深い写真が飾ってありました。
天皇と皇后の写真なのですが、このお二人の服装をご覧になっていただきたいです。

なんとお二人ともツイードをお召しになっています。

決して風化しない、いつの時代も波風立たぬ洋服であることをみて取れます。

そしてコートはトレンチコート!
なんてブリテッシュトラッドなスタイルなのでしょう。
ハンフリーボガードのように紐をぎゅっと絞るのは高貴な着方ではないですよね。確かに、しっかりとバックルで通して真っ直ぐに着られる方がお似合いです。このように、服装はその人の品格が表に如実に表れます。
目立たぬ中で、服装の正しさはしっかりと守るという信念を(勝手に)感じます。

お母様の美智子様も若い頃のファッションはとてもモダンで美しい服装をされていました。
英国王室のような派手さなありませんが、こうして普遍的なものを楽しまれているというのはとても心が和みます。

沼津のもう一つの目的であった有名な古着屋ですが、そこはあまり好みが合わなかったので、不発でした。

帰り道にクレマチスの丘(ここもとてもいい場所です。近くにあるビュッフェ美術館も素晴らしい)に立ち寄り、庭園を散歩して今回の一人旅は完了です。

今日から11月が始まりました。
今年も残すところ2ヶ月です。

BERUNも年始早々、新たな動きがありそうです。近々ご報告できることと思います。
今年いっぱい、思う存分楽しみます。

-Atelier BERUN-
東京神楽坂のビスポークテーラー

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